最終年度は,(1) 顧客存在確率分布の差分抽出方法の研究,(2)空間レイアウト最適化に関する研究,(3)顧客動線の3Dヴィジュアライゼーションのインターフェイス開発を行った. (1)では,属性,日付,滞在時間など様々条件によって2群に分けられた顧客の存在確率分布の差分を抽出し,ビジュアライズするシステムを構築した.これによって,商品配置やサイネージなどの変更に対する,実際の顧客存在確率の変化を視覚的に把握することが可能となり,様々な分析への応用が可能となった.(2)では,店舗平面をIsovist-Graphの2つの指標(近隣サイズ,クラスター係数)を用いて評価することによって,棚配置を最適化する手法を開発した.具体的には,店舗に顧客がランダムに分布すると仮定し,これらの顧客間の可視・不可視の視線をグラフ化することで,顧客の視覚情報を定量的に把握することが可能となった.また,計算機によって配置を少しづつ変化させながら,指標の値を最大化または最小化する,最適配置を探索するアルゴリズムを開発し,ケーススタディーを行って有用性を確認した.(3)では,顧客動線のような時系列情報含む位置情報を直感的に把握するためのインターファイスを考案した. XY座標に顧客のスーパーマーケット内の平面上の位置を,Z軸上に時系列をとり,2次元上に表示させることで顧客の流れをより直感的に把握することができ,数値データだけでは分かりにくい顧客動線データの概観を理解することが可能となった. このように,本課題においては,RFIDによって取得される顧客動線の分析・ヴィジュアライゼーションから,店舗配置計画への応用までの一連のプロセスについて研究を行った.今後の課題としては,店舗レイアウト最適化の評価関数の設定について,顧客動線やPOSデータのマーケティング分析からの知見を取り込むことが挙げられる.
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