研究課題/領域番号 |
24730375
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
中原 孝信 関西大学, ソシオネットワーク戦略研究機構, 研究員 (60553089)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 潜在価値 / データマイニング / 購買モデル / 顧客動線 / RFID |
研究概要 |
本研究の目的は、顧客の購買行動に着目し、購買意図はあるが購買に至らなかった行為を反映させた顧客潜在価値という概念を構築しその理論化を行うことにある。そのために「顧客潜在価値の概念定義と理論化」→「顧客潜在価値モデルの構築」→「応用可能性の検討」という大きく3 つのフェーズを実施する。特に顧客購買履歴データと顧客動線データを利用した実証研究から得られた知見を利用して、潜在的な購買力を定量的に示した②「顧客潜在価値モデルの構築」が中心となるため、本年度では、顧客動線データと顧客購買履歴データを用いた実証研究を重点的に実施した。 実証研究では、顧客の店舗内の買い回り行動と、店舗内に設置されている売場の持つ特性に着目して研究を行った。店舗内の買い回り行動に関しては、購買額が高い顧客グループに特徴的であるが定番とも言える買い回り行動を発見した。そして、定番となる買い回り行動を実施しない顧客に着目することで、新たな知見を得ることが可能であり、そのような知見を基にして理論を精緻化することが可能である。一方売場に着目した研究では、定常状態と比較して、急激に買い物客が増加する現象をバーストとして捉えて、売場によってバースト発生の有無やバースト時間が異なる点を発見することができた。バースト発生時の売場は、定常状態よりも混雑している状況を示しており、顧客はそのような状況時には、計画購買として想起されている商品以外の購入が控えられる傾向にあるのではないかという仮説が得られた。このように顧客の店舗内の購買行動を分析することで、明らかになった知見は、本モデルを構築するためのパーツとして重要な役割を持つことから、今後も実証研究を積極的に実施することで、モデルの精緻化を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を実施するに際して、①「顧客潜在価値の概念定義と理論化」→②「顧客潜在価値モデルの構築」→③「応用可能性の検討」という大きく3 つのフェーズに分けて研究を進行するが、本年度は、①と②を実施しており、特に②を重点的に実施した。その理由としては、より多くの知見をデータから得ることが理論を精緻化する上では重要だと判断したからである。その成果としては、「研究実績の概要」で記した通りいくつかの新たな知見が得られた。①の理論化に関しても2年目では、1年目の成果を反映させて理論を改善できると考えられるため、特に研究を遂行していく上での問題はないと考えられる。以上のことを鑑みると②のモデルの構築に関しては当初の計画以上に順調に進んでいるが、理論化に関しては、実証研究と並行して理論を改善しながら精緻化する方法を実施していることで当初の計画よりも緩やかに進んでおり、総合的には、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1年目はおおむね順調に研究が進んだので、今後も計画通りに研究を遂行していく予定である。顧客潜在価値モデルの構築のために、グラフ理論、商品間の相関ルール、そしてマルコフ遷移確率など、多くのモデル化に関する方法論の中から、顧客潜在価値を定量化する上で適合した方法を選択し、モデルの構築と精緻化を行う。特に現在注目している研究は、ビッグ・データを用いた研究であり、Twitterやニュース記事などを対象に開発された手法を顧客動線データの実証研究に適用することで、その有効性を検討したいと考えている。顧客動線データは、SNSなどのビッグ・データと同様にストリームデータなので、そのような手法を積極的に適用し、新たな知見の発見を試みる予定である。理論化に関しては、得られた知見を考慮しながら、店舗内の購買行動を対象にした購買プロセスの理論的検討も継続して行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画としては、当初の予定から大きな変更はない。国内・海外旅費としては、新しい手法や他の領域で開発された手法の応用可能性などを調査するために、国際会議や国内の学会へ参加する。既に来年度には人工知能学会への参加が決まっており、そこで研究成果の発表を行う予定である。また、電算機器に関しては大規模な顧客動線データを解析するために、Mac Proの購入を検討している。
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