平成25年度には大きく3つの活動を行った。 第1に、日本企業の利益属性の決定因子として、日本企業の投資行動やリスクテイク行動と利益属性との関係性を分析した。日本をはじめとする東アジア諸国においては、他地域と比べて利益平準化にこだわる傾向があり、それが日本企業の安定的な投資行動を支えていることが確認されているほか、日本企業の安定配当行動とも深くかかわっていることが明らかになった。 第2に、日本企業の利益属性を支える経営者の意識を明らかにするため、平成24年度に実施した日本企業の財務・経理担当責任者に対するアンケート調査を分析し、同様の分析を行った米国企業との比較分析を行った。分析の結果、日本企業は米国企業と比べて、経営者報酬と利益数値との結びつきが弱く、加えて証券市場をめぐる制度基盤が脆弱な側面があり、証券市場における情報利用とは別の目的で、会計情報が活用されている可能性が高いことが確認された。 第3に、上記のような分析結果を、国内外の学会などで報告し、多数の研究者や実務担当者からフィードバックを得る機会を得た。たとえば、日本会計研究学会から韓国会計学会に派遣された研究報告担当者の一人として、韓国会計学会での報告の機会を得たほか、日本会計研究学会の統一論題の報告者の一人として報告の機会を得た。また欧州会計研究学会でも同様の研究報告を行ったほか、筆者が参加していた経済産業省の企業財務委員会の企業会計実務者WGでも報告を行い、参加者との議論を行った。その他、『會計』などでも研究成果を報告した。
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