研究課題/領域番号 |
24730388
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
堀口 真司 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (10432569)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 会計制度分析(ヨーロッパ) |
研究概要 |
「会計制度の社会学的分析に関する基礎的研究」という課題のもと、本研究では、1980年代以降、ヨーロッパを中心に取り組まれてきた会計制度の社会学的な分析の動向とその意義を体系的に整理し、今後、当該分析方法を日本の文脈に応用しその成果を海外発信していく上で、必要となる知識基盤を提供することを目的に、手引書の作成を進めている。 研究計画の通り、平成24年度においては、第1部「会計制度の社会学的分析の意義」に焦点を当て、既出論文である「相対主義的会計研究の現代的地平」を基礎としながら、関連資料の収集及び整理を行い、第1部の構成を固めた。 その上で、研究をさらに進め、当初平成25年度に予定していた第2部「会計制度におけるマネジリアリズムとその相克」に着手し、「現代ネオリベラリズム下における管理体制」および「管理のシステム化とその相克」に関する議論を整理し、公表した。 具体的には、平成24年6月にイギリス・ニューキャッスル大学において開催されたヨーロッパ企業倫理学会研究総会においてPolicy incoherence of Accountabilityに関する研究報告を行い、さらに9月にはスペイン・バルセロナIESE ビジネススクールにおいて開催されたヨーロッパ企業倫理学会年次総会において、Offense and defense of accountability: Analysis of pros and cons of the conceptに関する研究報告を行った。両報告ともに、1980年代以降の企業の社会的責任(CSR)の発展と会計学との交差を、マネジリアリズムの相克という観点から議論したものであり、今後、これらの議論をもとに、本課題研究の第2部を編成する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、平成24年度においては第1部「会計制度の社会学的分析の意義」に取り組み、平成25年度においては第2部「会計制度におけるマネジリアリズムとその相克」に取り組む予定であったが、第1部において、以前に作成した「相対主義的会計研究の現代的地平を求めて」を踏襲する形で整理を進めたため、進捗が予定よりも進み、結果的に、平成24年度内において第2部の一部に取り組むことが出来た。平成25年においては、平成24年度に一部行った研究を継続させ、第2部の完成を試みる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、平成25年度内には、第2部「会計制度におけるマネジリアリズムとその相克」に焦点を置く。具体的には、1980年代以降に展開されてきた、戦略的管理会計、ニューパブリックマネジメント、企業の社会的責任といった議論に通底するマネジリアリズムという思想を整理し、それが会計学の中でどのように取り扱われてきたのか、またその重点はどこに置かれてきたのかを検討する。なお、企業の社会的責任に関する研究は、平成24年度において既に着手しているため、本年度はこれを踏襲する形で進めることになる。従来、株主に対する責任にのみ重点がおかれてきた企業経営が、様々なステイクホルダーとのかかわりを重視する方向へと制度全体が変化する中で、企業経営者から見たステイクホルダー管理という視点が、それらの制度変化とどのように関わるのかがここでの大事な論点であり、会計学と交差する諸論点を整理することになる。本研究の成果については、当該年度内に開催される国際学会において報告する予定であり、申請した研究費の一部(旅費)は、主としてこれに充当する予定である。 また、今年度以降の研究計画の変更点として、当初の計画においては、当該課題研究に深く関係する、社会学的会計制度分析を過去30年に渡って先導してきた学術誌Accounting, Organizations and Societyに掲載された全ての論文をレビューした一覧表の作成を同時に平行して進める予定であったが、当該雑誌に掲載された社会学的会計分析に関する論文は、その大部分が本課題研究で作成する書物の中に重複して説明される予定であること、また、最近の掲載論文の内容が過度に細分化されており、必ずしも社会学とは言えない文脈での議論が散見されることから、一覧表の作成を一時的に中断し、本書執筆後に必要となれば作成を継続し、本文中に挿入する形で掲載することにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は、会計制度の現状の記述、およびヨーロッパにおける学術動向の整理を目的としているため、関連図書および資料の購入と、資料収集および成果報告を兼ねた海外渡航が、研究費の主な使途となる。平成25年度においては、前年度に引き続き、旅費及び、図書関連資料の購入費を計上する予定である。なお、「今後の研究の推進方策」の中で述べたように、学術誌掲載論文の一覧表作成を一時中断するため、当初研究計画書に記載していた、資料整理要因としての人件費・謝金科目費については、関連資料の購入へと配分する予定にしている。
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