研究実績の概要 |
本研究の目的は、監査報酬モデルの理論的検討および実証的国際比較を行うことである。研究の最終年度である平成26年度は、分析モデルの精緻化と追加データの取得を実施した。監査報酬の差異を説明する国共通因子として、新たに規制因子(regulatory factors)、経済因子(economic factors)、そして事業因子(business factors)を設定し、それぞれに該当する追加データを取得した。規制因子はLa Porta et al. (2006)で挙げられている5つの因子(commonlaw, anti-director right, disclosure requirements, liability standard index, and public enforcement)、経済因子はGDP、一人当たりGDP、一人当たりGNI、そしてCEO報酬、事業因子はROEの中央値と分散である。これらはもとに日本企業の平均的な監査報酬の低廉さの要因を分析した結果、public enforcementの弱さ、CEO報酬の低さ、ROEの平均と分散の低さがその要因として統計的に意味をもつことが観察された。これらの結果から示唆されることは、日本の証券監督の弱さ、経営者報酬の低さ、ビジネスリスクの弱さといった要因が日本企業の平均的な監査報酬の低廉さの原因であるということである。以上の研究成果は、2014年日本会計研究学会全国大会(横浜国立大学)にて発表された。なお、当該成果は英文ジャーナルに投稿予定である。
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