本研究の目的は、インタンジブルズであるコーポレート・レピュテーション(企業の評判)が企業業績に影響を及ぼす構造をわが国上場企業を対象とした実証研究によって解明することにある。 この目的を達成するために、全体の研究計画に従って最終年度は、コーポレート・レピュテーションと財務業績の関係性に関する実証研究のためのモデルを資源ベース理論(RBV)とシグナリング理論に基づて提示した。その特徴は、先行研究のようにコーポレート・レピュテーションと財務業績をダイレクトに関係づけるのではなく、ステークホルダーのロイヤルティを両者の間に介入させた点にある。 次に、一般消費者を対象とした企業の評判に関する質問票調査を行った上で、提示したモデルに従って共分散構造分析を実施した。結果として、コーポレート・レピュテーションがステークホルダーの情緒とステークホルダーの期待という2つの側面から、ステークホルダーのロイヤルティを高めていることが明らかにされた。 しかしながら、今回の分析ではステークホルダーのロイヤルティが財務業績にどのような影響を及ぼすかの解明にまでは至らなかった(なお、コーポレート・レピュテーションと財務業績の相関関係は前年度までに実証済み)。この点を残された課題として、すでにデータセットを揃えてあるため、本研究期間終了後も、コーポレート・レピュテーション、ステークホルダーのロイヤルティ、財務業績の関係性を実証分析によって紐解いて行きたいと考えている。 なお、以上の内容については、日本管理会計学会の2015年度年次全国大会(於 近畿大学)で報告を行っている。
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