研究課題/領域番号 |
24730397
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
中村 亮介 帝京大学, 経済学部, 講師 (40549713)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 疑似通貨 / ポイントプログラム / キャッシュ・フロー |
研究概要 |
平成24年度は,「研究目的」で掲げたフレームワークのうち,疑似通貨の実態を把握するための基礎研究として,ポイントプログラム会計の実態を調査した。 これまでの研究では,提携型ポイントプログラム会計の研究より,プログラムを運営している各々の企業では,ポイントを通じたビジネスモデルに違いがあり,それに応じて会計処理が異なることがわかっているが,今年度は企業ごとの会計処理の差異要因について検討した。このため,既に調査済のポイントプログラム運営企業3社に加え,日本を代表する航空マイレージプログラムを運営する企業について資料・インタビュー調査を行った。 この結果,将来のキャッシュ・アウトフローの特徴に応じて会計処理を工夫していることがわかった。具体的には,①組織におけるポイント資金の拘束性の強弱が会計処理とむすびついており,②ポイントの機能(1ポイントあたりの価値が可変か不変か)が影響を与えている要因の1つと考えた。このことから,ビジネスモデルと会計処理の関係をつなぐファクターは,キャッシュ・アウトフローの特徴であることが示唆された。 さらに,現行の日本基準から,国際財務報告基準が規定する会計処理に変更した場合に,純利益への影響はポイントの原価率が低い企業ほど大きくなることを明らかにし,原価率の低い企業は,純利益への影響とシステム変更費用などの理由から,自主的に国際財務報告基準が規定する会計処理に変更するインセンティブは働かない可能性が高いことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究実績の概要」の内容については,「提携型ポイントプログラムにおけるキャッシュ・フローの特性と会計処理」というタイトルで,日本会計研究第71回全国大会(一橋大学,2012年8月)にて岡田幸彦准教授(筑波大学)・大雄智准教授(横浜国立大学)とともに報告している。 また,当該内容を含んだ論文が,「提携型ポイントプログラム会計の実証分析」(岡田幸彦准教授(筑波大学)・大雄智准教授(横浜国立大学)との共著)というタイトルで,日本会計研究学会の機関誌である『会計プログレス』(第13号,2012年8月)に掲載された。 さらに,ポイント引当金に関連し,債務契約について論じた「財務制限条項情報の株式市場における評価」が『會計』(第182巻,2012年5月)に掲載された。 これにより,応募時に掲げた「平成24年度に学会報告を1回,論文1本を発表する。」という目標を上回っていることが理由である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,前年度の基礎調査をもとに,疑似通貨の実態を把握することに注力する。 疑似通貨を扱っている企業は,どのように疑似通貨の価値を担保しているのかについては,未だ判明していない。ポイントプログラムを扱っている企業の実態について研究した成果をもとに推察するに,疑似通貨の価値担保を会計上,どのように表現するかがキーになってくると思われる。そこで,この点を中心に,疑似通貨を扱っている企業を資料およびインタビューにより調査・検討する。 さらに,疑似通貨を扱っている企業およびその提携会社へアンケート調査を行うことにより,広汎に会計処理と疑似通貨の実態の関連性を把握したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
疑似通貨を扱っている企業(JR・パスモ・ビットワレット・セブン&アイHD・イオン)へヒアリング調査を行い,さらにポイントプログラムおよび疑似通貨に関する報告が行われる学会に参加するため,相当程度の旅費交通費が必要となる。 また,アンケート調査が実現すれば,調査を手伝ってくれる学生への謝金・さらにアンケートデータ入力のためのパソコンを購入することとなる。
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