研究課題/領域番号 |
24730404
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
島永 和幸 神戸学院大学, 経営学部, 准教授 (90362821)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 自己創設無形資産 / 人的資本 |
研究概要 |
本研究は、知識創造型経済の進展を背景として、企業の持続的競争優位の源泉をなす自己創設無形資産に焦点を当て、自己創設無形資産の公正価値会計はいかにあるべきかを理論的かつ実証的な側面から体系的に調査・研究することを目的とする。平成24年度は、人的資本(とくに集合的な人的資源)に焦点を当て、会計上の取り扱いについて確認し、税務上の論点と課題について検討した。その結果、次の3点が明らかにされた。 現行の会計規定では、人的資本は取得時または自己創設の場合のいずれにおいても、無形資産として認識することは禁止されていることが明らかにされた。集合的な人的資源の認識規準においては、ケースバイケースで認識・測定することを主張する論者もみられた。すでに他の無形資産の評価のために集合的な人的資源が測定されていることや、あるIT会社では任意開示で人的資源の評価がなされていた。ゆえに人的資本の認識問題や測定可能性の問題は再検討する必要があると指摘した。 人的資本との関連において3つの税制上の論点について検討した結果、①無形資産の定義に集合的な人的資源が含まれるか否か、②仮に含まれる場合には、その評価が次の課題となる点で、共通していたことが確認された。税制上の問題と、会計上の問題とを同列に扱うことは適当ではないかもしれないが、その定義や評価という側面から見れば財務報告目的であれ税務目的であれ、同一問題を取り扱っているといえる。隣接領域での人的資本の取り扱いに関する議論は会計にも影響を及ぼすものと考えられる。 IFRSにおける公正価値測定の定義や見積方法を概観し、計算例を用いて集合的な人的資源の公正価値測定方法における算定方法の分析を行った。新再調達原価マイナス減価法(RCNLD)で算定された人的資本の公正な市場価値は、IFRS13における公正価値の測定アプローチと整合的であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究では、自己創設無形資産の公正価値会計がいかにあるべきかについて、国内外の文献研究等を踏まえて研究を行った。具体的には、関連文献の収集や文献研究、および学会報告や学内紀要への論文の投稿を行った。さらに追加の研究を踏まえて、次年度以降に予定されているさらなる理論研究の推進と定量的調査の準備を行った。 具体的には、自己創設無形資産の認識、測定、開示問題は、広範な内容を包含するため、上場企業等へのアンケート調査を行うにあたっては、そうした内容をいかに網羅的に調査するかが課題となる。そのため、各種研究会や学会等への参加・議論などを最近の研究動向の把握や、研究者との交流・情報交換を図った。
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今後の研究の推進方策 |
これまで行われた文献研究を前提として、自己創設無形資産の公正価値会計に関する理論・制度フレームワークの構築を目指す。また、企業結合時に認識される無形資産の会計的測定・開示の手法や、統合報告など非財務的測定・開示の手法についてより詳細な研究を実施し、財務諸表では認識し得ない自己創設無形資産開示のあり方についても論究する。 また、アンケートによる定量調査の調査項目を確定し、アンケート調査を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究関連図書などの資料収集や、国内外への研究旅費、アンケート調査に必要な関連経費などに研究費を使用する予定である。
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