研究課題/領域番号 |
24730405
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
三光寺 由実子 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (60549301)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 会計史 / フランス |
研究概要 |
本研究の目的は、フランスにおいて本格的に複式簿記が普及し始める16世紀から、 1673年のフランス商事勅令に至るまでの、フランスにおける会計システムの変遷を実証的に解明することにある。研究機関の初年度である本年度は、16-17世紀にいかなる会計帳簿が存在しているのかを検討することから研究を開始した。その際、最も重要な資料となったのが、Bouttin[2001]であった。そこではSavonne等の簿記書を題材とし、フランス各所の企業において、それらで説かれた簿記が、実務にいかなる影響を及ぼしたのかについて言及をしていた。そこから得た知見は、単に16-17世紀フランスにおける特定の会計帳簿にのみ焦点を当てるのでは、既存研究を発展させるとは必ずしもいえないということであった。16-17世紀の会計帳簿はもとより、その前後の世紀において存在する会計帳簿にも目を向け、また商業帳簿に加え、例えば工業帳簿等をも含めた鳥瞰図的な分析にこそ、16-17世紀に存在したフランスの会計記帳システムの変遷を網羅的に知るために、必要であるということであった。 そして、そのような研究の主旨に最も見合う、有益な資料となるのがComptabilite(s): revue d’histoire des comptabilite(s)であった。これは、近年、フランスにおいて行われた会計帳簿に関する三つのプロジェクトでの研究成果を電子ジャーナルとしてまとめたものである。本研究が対象とする16-17世紀の会計帳簿としては、近代における管理の歴史の構築を主たるテーマとしているため、公会計に係るものが多いが、中には、大鍛造工場の会計等もあり、また、複式簿記の実践の検討についての言及もしばしば見受けられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フランスの会計帳簿に関する研究は、近年活発になりつつある。それゆえ、研究を進めていく中で、当該領域の現状等が把握しやすく、また、どこに研究の余地があるのかも比較的見出しやすいことが明らかになった。しかしながら、そうであるからこそ、当初想定していた研究予定をそのまま適用することが時に難しく、資料の検討は入念に行う必要も生じた。 本年度は、既存研究の把握や資料の吟味にも多くの時間を費やしたが、他方で有益な資料を見出すことができ、総じて研究計画はおおむね順調に進展しているということができる。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、Comptabilite(s): revue d’histoire des comptabilite(s)における各会計帳簿から読み取ることのできる会計システムつぶさに分析することにある。その際、着目すべき点の一つに「複式簿記への言及」がある。なぜならば、16世紀以降に複式簿記の解説書がフランスで出版されたということへの、何らかの関連性が見出せる可能性があるからである。その上で、「16-17世紀に存在したフランスの会計記帳システムの変遷」とはいかなるものであったのかを考究したい。この際、Comptabilite(s): revue d’histoire des comptabilite(s)の中には、しばしば難解な表現が登場するが、誤った解釈をしてしまうことを回避すべく、時折専門家に助言を頂く予定である。 同時に、なぜ現在、フランスにおいてフランス会計史が再検討されているのかについても客観的な見解を示せる可能性がある。フランスにおける会計史家は何を動機に、何に着目し、いかにして研究を行うのかについても、追加的な知見を加えることができると予想される。なお、研究成果は、最終的に論文として公表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度、残額が生じたのは、「9 研究実績の概要」で示した通り、研究対象の吟味に当初の予定よりも時間を要したことに起因する。さらには、次年度に本格的に行う具体的な分析の際には、以下の通り今年度より多くの支出がかかることが予想され、その分の余裕をみた支出を行うに至った。 すなわち、次年度の研究において、Comptabilite(s): revue d’histoire des comptabilite(s)sの分析の際に、難解な表現や、解釈の出来ない文言が登場することが予想される。そうした際は、フランス語の専門家に助言を頂く可能性がある。ゆえにその際の、謝金等は、本年度より多く生じると思われる。また、「16-17世紀に存在したフランスの会計記帳システムの変遷」を理解するための背景知識としての文献の購入も予定している。
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