研究課題/領域番号 |
24730407
|
研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
飛田 努 福岡大学, 商学部, 准教授 (60435154)
|
キーワード | 中小企業 / 管理会計 / マネジメント・コントロール / 会計技法 |
研究概要 |
今年度は学会における報告2編行い,そのうち1編を論文として寄稿し,現在校正作業を行っている。ともに中小企業における管理会計実務に関する概略的な報告であり,これまで実施してきた研究成果のとりまとめとも言えるものである。 特に,論文として執筆した研究成果については,福岡市と熊本県で実施した中小企業の管理会計実務に関するアンケート調査結果をもとに統計処理を行った結果として,少人数企業(概ね30名未満)とそれよりも多くの人員によって構成されている企業群では,会計情報の利用に違いが見られるとともに,中小企業において独自の管理会計実務が存在することを事例を元に学会報告,論文執筆を行った。 また,これとは別に,引き続きインタビュー調査を実施している。福岡県のとある家具店は創業以来44年間赤字決算をしたことがなく,創業当初はそれまでの取引慣行とは異なる方法で販路を広げ,次第に企業規模の拡大を果たしたとのコメントを得ている。そして,組織規模の拡大とともに,組織構造,会計システムを変更し,現在では分権化を進める新たな会計システムの構築を図るべく,鋭意準備を進めているとのコメントを得られた。当企業については,次年度以降も調査を引き続き実施する予定である。 さらに,事業再生中の中小企業からも引き続きインタビュー調査を実施し,当該企業の再生プロセスを取りまとめることによって,中小企業における管理会計実務の一端を明らかにすることができると考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文の執筆,最終年度における学会報告等の準備が進んでおり,研究は概ね順調に進んでいる。しかし,理論的な分析・検討を十分に行えているとは言えず,依然として今後の課題である。最終年度は,事例のとりまとめとともに,理論的フレームワークの構築が求められると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
中小企業の管理会計システムは簡素であり,場合によっては経営者が「意図せずに設計した」システムが順機能している事例も見られる。これまでの管理会計研究の中心は大規模で階層化された組織における管理会計システムそのもの,あるいはその利用方法の研究であった。そうした研究のフレームワークとは異なる視点での研究が必要であると考えられ,従来の事例研究と並び,理論的なフレームワークの構築が求められる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度は新たな物品の購入が無かったこと,前年度からの繰越金があったため,申請時とは異なり次年度使用額が生じた。これは研究計画が進捗していないことを意味するのではない。 最終研究年度を迎えるにあたり,研究成果に結びつくような調査を行うことにする。九州のみならず,他地域の調査を行うことや,必要文献の購入等を円滑に行うことにより,充実した研究成果を得られるよう鋭意努力する。
|