本研究は、戦後日本社会における地域社会の変容を、戦後開拓地という、自然村とは異なる原理のもとに編成された地域のコミュニティに注目し、その形成の経緯や諸政策の影響、世代間継承によって生じる変化を分析することにより、社会変動が地域社会を生み出す過程と、地域社会が社会変動を生み出す過程という2つの次元から考察することを目的とする。平成26年度の研究実績は以下のとおりである。 1.生活史調査:前年度に引き続き青森県岩木山麓地域と岩手県岩手山麓地域をフィールドに、戦後開拓地に居住する人々を対象としたライフヒストリー・インタビューを実施した。前年度からの第二世代以降の人々を対象とした、生育歴からコミュニティ体験、職業経歴、家業継承の意向と将来の見通し、地域におけるネットワークの世代間の変化、といった点について聞き取り調査を行った。 2.資料収集調査:東京都・青森市において、(1)戦後開拓地に関する統計資料、(2)各開拓地の記念誌などの回顧的資料、(3)戦後開拓地をめぐる雑誌・新聞記事、ルポルタージュなどの資料を収集した。加えて千曲市において(4)開拓自興会に関する資料を収集した。(4)にかかる一連の資料は、戦後開拓地の横のつながりを把握するうえで有用な資料である。 3.データ分析:収集した文献・資料に基づき、戦後開拓地における政策動向の影響や経営状況の動向を分析した。この作業と並行してライフヒストリー・インタビューから個人、家族、コミュニティのライフコースパターンを再構成し、対象地域にみられる特徴を整理したうえで、マクロな歴史動向とコミュニティコースの相互関係について考察した。そのうえでコミュニティの継承や維持における女性のまとまりや学校の存在意義といった点を明らかにした。 4.研究の総括:これまでに行ってきた研究のまとめとして、対象地域に関する1世紀の歴史を著作としてまとめ、刊行した。
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