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2013 年度 実施状況報告書

コミュニティFM局による東日本大震災以降の支援活動とコミュニティに関する調査研究

研究課題

研究課題/領域番号 24730411
研究機関東北大学

研究代表者

寺田 征也  東北大学, 情報科学研究科, 博士特定研究員 (40583331)

キーワードコミュニティ放送局 / コミュニティメディア / 東日本大震災 / 臨時災害放送局 / 社会学 / 災害情報
研究概要

平成25年度は調査対象である「エフエムたいはく」における地域連携の事例として、特に放送局のコミュニティカフェ化を目指した「ラウンジ改修プロジェクト」への参与観察を行なった。震災以前からの懸念事項であった放送局一階ラウンジを、より地域住民およびパーソナリティが交流可能な空間として改装することを目指したこのプロジェクトを通じて、放送局内外の人的資源の相互交流が活性化することとなった。
また宮城県大崎市に平成25年6月に開局した「おおさきエフエム放送」を新たな対象に加えた。「おおさきエフエム放送」は茨城県高萩市の「たかはぎFM」に次いで、臨時災害放送局からコミュニティ放送局へと移行した全国2例目であり、臨時災害放送局閉局後2年の準備期間を経てのコミュニティ放送局化した希有な事例である。さらには内陸部の放送局ということもあり、沿岸部とは異なる被災状況下での臨時災害放送局の活躍や役割、コミュニティ放送局化に伴う諸問題と地域・行政との連携についての詳細なインタビューを行なった。調査を通じて、放送局が地域住民と行政とを媒介しつつも、その立場性が常に捉え返されていることが明らかになった。
そうした研究の成果として、"What Social Problems should Community Radios treat?"(Society of the Study of Symbolic Interaction Annual Meeting 2013, NYC)、「臨時災害放送局からコミュニティ放送への移行を支えるもの――おおさきエフエム放送の事例」(第86回日本社会学会大会、慶應義塾大学)の2本の学会報告を行なった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成25年度の研究は、対象の拡張および研究課題の深化の点で大きく進展した。平成24年度の反省として、1.臨時災害放送局からコミュニティ放送局への移行の問題に焦点をあてる、2.放送局の立地条件の差異(大きくは沿岸部か内陸部か)に注目する、という二つをあげたが、新たに宮城県大崎市の放送局「おおさきエフエム放送」をフィールドに加えることによって、上記2点をクリアすることができたからである。
当初の対象地であった宮城県仙台市太白区の「エフエムたいはく」においても、放送局を地域住民の交流の場へと作りかえる組織に加わり参与観察を行うことによって、地域における放送局の位置づけを経験的に理解することができた。
さらに、それら二つの放送局を通じて、宮城県内のコミュニティ放送局同士の連携についてもうかがい知ることができている。放送事業の実務者でしか参加することのできない組織、会合について、多角的に接近できるようになったことは非常に意義あるものとなっている。この点において、研究の進展と同時に、今後の研究基盤の強化もできた。
また海外学会にて日本のコミュニティ放送局の現状について報告し、コメントをもらうことができたことも大きな達成であった。特に日本とアメリカにおける公共空間の差異については非常に示唆的な意見を得ることができた。
研究成果の論文化は達成することは出来なかったが、調査の進展の点では順調であったと言える。

今後の研究の推進方策

平成26年度は最終年度として、昨年度にあらわれた課題についての調査および検討をおこないつつ、これまでの調査研究のまとめを行なう。
まずこれまでの研究の成果としては、コミュニティ放送局が「ラジオ」という形態を採っている事の特異性に着目し、論文化したい。昨今インターネット上でのSNSや動画配信が活発化するなかで、あえて「ラジオ」であることの意義は、マイクやスタジオといった舞台設定が持つ魅力、そして身近な<マスメディア>であることの価値から見出す事ができる。従来のコミュニティ放送局研究は主としてメディア論の観点から為されてきたが、社会学的分析視角を通じて、ラジオのメディア性に着目し、特に災害時における意義を示す予定である。
また新たに現われた課題としては、臨時災害放送局からコミュニティ放送局への移行に加え、災害時に臨時災害放送局が現れなかった地域においてコミュニティ放送局設立の機運が高まってきていることがあげられる。この地域は、既存の放送局への研修を通じて新規立ち上げ準備を行なっているが、そこに孕む諸問題を準備段階の時点から明らかにすることは、今後の起こりうる災害への対応とも絡めて重要な問題となってくる。
これらを踏まえて、年度末にかけて研究成果の取りまとめと今年度以降の研究の足場固めを行なう。

次年度の研究費の使用計画

次年度より所属先が変更する事にともない、調査研究のための出張旅費の支出増加が予測されたため、研究継続のための措置として次年度繰り越しを行なった。
次年度使用額については、主にフィールドワークのための旅費として用いる。特に、今年度からフィールドワーク先が増加したこともあり、また上記の通り所属先が変更することもあり、本研究を継続するには旅費が非常に重要となってくる。そのため、従来通りの緊密なフィールドワークを継続するために用いることとする。

  • 研究成果

    (2件)

すべて その他

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] What Social Problems should Community Radios treat?

    • 著者名/発表者名
      Masaya Terada
    • 学会等名
      Society for the Study of Symbolic Interaction
    • 発表場所
      New York City/USA
  • [学会発表] 臨時災害放送局からコミュニティ放送への移行を支えるもの――おおさきエフエム放送の事例

    • 著者名/発表者名
      寺田征也
    • 学会等名
      日本社会学会
    • 発表場所
      慶應義塾大学

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公開日: 2015-05-28  

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