昨年度に引き続き、ドイツの事例に関して調査(聞き取り調査および資料収集)をおこなったほか、研究の総括とそれに関する意見交換と、成果報告をおこなった。具体的には次のとおりである。 1980年代に使用済み核燃料再処理施設建設計画に対する反対運動が展開されたヴァッカースドルフおよびその周辺地域(バイエルン州)について、同施設建設計画以前の産業構造や生活環境の変遷を調査した。当該地域はもともと褐炭の採掘のために移住してきた人びとによって形成された地域であり、一時は褐炭の露天掘りで活況を呈した。すなわち、国策としてのエネルギー事業のもとにあった地域であり、その意味での、1980年代の原子力施設建設計画との連続性が明らかになった。 1989年に同施設建設計画が白紙撤回された後、当該地域は、自動車産業を誘致し一大製造業地帯となっているほか、褐炭の露天掘りで残された採掘跡を人工湖として整備しリゾート地としても成功している。調査では、これら産業誘致や観光化の過程について、当時の地方紙報道などの資料を収集し、加えて、当時の行政長への聞き取り調査をおこなった。 さらにこうした調査結果について、レーゲンスブルク大学のUli-Otto氏らと意見交換をおこない、同氏が展開している反対運動の文化的側面の調査研究との統合を試みた。これらの成果は、今後、デジタル・アーカイブおよび紙媒体で公表される予定である。 上記のほかに、これまで調査をおこなってきた他の地域(ヴィール原発建設計画跡地、カルカー高速増殖炉跡地、ビブリス原発立地自治体、クリュメル原発立地自治体、ブロクドルフ原発立地自治体)について研究会、学会等で報告をおこなった。
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