研究課題/領域番号 |
24730421
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
園部 裕子 香川大学, 経済学部, 准教授 (20452667)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 移民 / 女性 / フランス / 西アフリカ / ジェンダー |
研究概要 |
今年度は文献調査を進めつつ、現地調査のためパリ市内にある女性移住者の市民団体と連絡をとり、今後のプロジェクトについて打ち合わせを行った。 まずDe Certeauによる日常的実践における「戦略」と「戦術」の概念について、理論的な整理を行った。受入社会の規範を共有せず、社会的に排除された移民は、その社会において支配的な論理を駆使し、独自の場や空間を占めることで自らの地位を確立することはできない。セルトーが〈戦略〉と呼ぶこうした権力主体の論理や空間に対して、弱者の〈戦術〉は「非―場所non-lieu」的で、時間に依存する。弱者は、自分にとっての「よその」土地において「日常的実践pratiques quotidiennes」を展開する中で、たえず警戒し、利になる機会をすばやく捉える〈戦術〉に頼るしかない。〈戦術〉は自分に固有のものではない権力の論理や力を弱者が日常的実践により利用し、横領する「策略ruse」、「仕方、てだてart」である。 また、調査に向けて準備を行った。これまで調査を続けてきた移住女性団体に加え、複数団体によるネットワークの活動に対象を広げるため、代表者に連絡をとった。本研究費によらないフランス滞在の機会に聞き取りを行ったところ、調査先団体メンバーの西アフリカの出身国におけるプロジェクトが進行していることが分かった。そのうちセネガルにおいて、現地の女性団体との協力による「マラリア撲滅キャンペーン」が2013年4月末に行われることが分かったため、キャンペーンに同行して、参与観察と聞き取りを含めた現地調査を実施することにした。メールによる連絡交換に加え、勤務先の研修引率のためのフランス滞在中に打ち合わせを行うことができたため、今年度中は本研究費による渡航調査を行わず、2013年4月のセネガル渡航に備えて研究費を繰り越すことにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献調査はおおむね順調に進んでいるが、本年度の計画のうち2つめの「エスニック化」の諸相については、十分な文献が収集できなかったため、引き続き来年度に調査を進める。 また調査については、予備調査を行う予定だったが、他の手段により渡航機会を確保できたため、次年度に本格的な参与観察を行う機会を設けることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度は、前年度からの文献調査を継続しつつ、現地調査を実施していく。移住女性は、受入社会が外部から「エスニック化」により付与する「アフリカ人」という表象に対して、「黒人」という認識により連携し、対抗する。他方で、出身地西アフリカの女性団体との連携により、出身社会と受入社会双方の〈間〉で機会をうかがいながら、マラリア予防や識字運動といった〈日常的実践〉を展開する。 以上の理論をもとに、フランスの移住女性団体ネットワークと西アフリカの女性団体との連携について聞き取りと参与観察を行う。2013年度には移住女性と連携する西アフリカ・セネガルの女性団体についても調査する。マラリア撲滅キャンペーンにおける参与観察と聞き取りを行い、移住女性の団体との連携がどのようにして実現したのかを明らかにする。また最終年度の長期調査のため、フランス・パリ市内外においてさらに移住女性団体の所在を明らかにする。 最終年度には、理論面での分析を補強する事例を収集するため、当初の予定どおりに現地調査に比重を移し、研究成果をまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでの文献調査で資料の収集が不十分だった項目を中心に、文献収集を継続する。 また、西アフリカ・セネガルにおける参与観察と聞き取りのため渡航調査を行う。さらにフランス・パリ地方の移住女性団体において調査を行うため、パリにおいて2週間程度の渡航調査を行う。
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