水産資源「増殖」は、明治以降の資源管理に係る政策、地域社会構造、携わる人びとのハビトゥスに大きな影響を与えてきた。本研究では米国と日本の文献・事例調査から、①19世紀末から広がった増殖技術が、資源政策,資源観、地域社会の変容、担い手形成に与えた影響、②資源増殖の担い手たちの信頼や社会的ネットワーク,記憶や物語の再編過程、③増殖の産業化・専業化・分業化と、単体の資源を「読みやすい」形で集中的に管理するよう形成された縦割・分断型資源管理制度との連鎖的展開、④そして、人びとの資源管理に関する動機、主体形成の契機、価値基準、社会規範の形成とこのような増殖による再編が与えてきた影響について明らかにした。
|