• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

薬害HIV感染被害者による「当事者運動」理念の再構成と分析

研究課題

研究課題/領域番号 24730426
研究種目

若手研究(B)

研究機関和歌山県立医科大学

研究代表者

本郷 正武  和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (40451497)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードHIV/AIDS / 当事者運動 / ライフストーリー / 評伝 / 薬害
研究概要

「薬害HIV」感染被害者Y氏が目指した「当事者運動」の理念を彫り出すために、本調査研究では故人に縁のある人々に対する聞き取り調査にとどまらず、書簡や写真、映像資料などの遺品を収集し、Y氏の評伝を製作する。昨年度は研究費を活用して、故人と縁のある地方および海外在住の方々へのインタビューを重点的におこなった。Y氏の来歴は大きく、①高校在学まで(1958~1978年)、②大学在学期(1978~1983年)、③当事者運動の準備期(1983~1988年)、④当事者運動を展開していた時期(1988~1996年)、⑤薬害HIV訴訟和解後から死去するまで(1996~2003年)、のように区分することができる。昨年度はそのうち②~③の期間の動向を追跡することに時間を割いた。結果、HIV感染告知を受け、活動のあり方を模索する中で、サンフランシスコを訪問し、現地の薬害HIV感染被害者や医療関係者と多数会っていたことがわかった。この訪問を境にY氏はHIV/AIDSや血友病に対する向き合い方について、チーム医療の重要性やNPO・ボランティアベースによる当事者支援活動の意義について確証を得ていたことになる。加えて、HIV訴訟期での国会陳情では、積極的に共感する議員の元に足を運び、薬害感染者と性行為感染者を区別しないかたちでの医療支援体制の構築を訴えていたことがわかった。さらに、自身のHIV/AIDSとの闘病生活の様子について、当時の担当医師にインタビューをおこない、抗HIV薬による副作用に苦しめられていた様子について、部分的にではあるが明らかにした。以上のHIV/AIDSをめぐる集合行為のあり方について、運動参加プロセスに焦点を合わせた論考「訴訟運動参加プロセスにみる「薬害HIV」概念の再検討」『社会学年報』42号(印刷中、2013年7月刊行予定)を投稿し、調査研究の中間報告の一部とした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

評伝の制作上、重要な聞き取りは昨年度中におおよそ終わらせる予定であったが、キーパーソンへの複数回のインタビューに加え、サンフランシスコ訪問時の足取りに不鮮明な点が多く、インタビューに多くの時間を割かなければならなくなった。それゆえ、Y氏が大学に進学するまでの話、訴訟期のより具体的な活動の様子についての調査研究が遅れている。しかし、現在もインフォーマントや依頼者との連絡調整を頻繁におこなっており、調査研究自体の継続には障害はなく、今後も引き続き詳細なインタビューをおこない、Y氏の足跡を丹念に再構成し、最終年度(26年度)には研究成果をまとめる予定には変わりがない。

今後の研究の推進方策

本年度は評伝の制作を進めるために、インタビュー調査に加えて、故人の遺した文書資料の内容分析をおこなう。インタビューでは、Y氏が大学進学するまでの様子、当事者運動から一歩引いた形となった後年の様子を中心に対象者を選定する。さらに、Y氏が本名・仮名それぞれで執筆・投稿した文書資料を収集し、Y氏の考える当事者運動の理念を彫り出すことを試みる。さらに、本調査の中間報告をかねて、Society for the Study of Symbolic Interactionの年次大会(8月8日~10日、ニューヨーク)にて調査研究成果を報告し、論考を機関誌『Symbolic Interaction』に投稿する。

次年度の研究費の使用計画

本年度も引き続き、日本国内の聞き取り調査をおこなうことに加えて、ニューヨークでの学会報告のための旅費に研究費の半分程度を充当する。さらに、多岐にわたる文書資料の整理と分析、多数の聞き取り調査をおこなうために、研究協力者への謝金支払いを増額することを検討している。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] 訴訟運動参加プロセスにみる「薬害HIV」概念の再検討2013

    • 著者名/発表者名
      本郷正武
    • 雑誌名

      社会学年報

      巻: 42 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [学会発表] The Development of Japanese Blood Program for Assuring Safety in Supplying Domestic Coagulation Blood Products: A Case Study of the Japanese Red Cross Society

    • 著者名/発表者名
      Masatake Hongo
    • 学会等名
      World Federation of Hemophilia World Congress
    • 発表場所
      Paris, France
  • [学会発表] An Attempt to Analyze the Narrative World of the Life-Stories of Doctors and Patients Involved in the HIV Tainted Blood Product Incident in Japan

    • 著者名/発表者名
      Yamada, T., H. Taneda, Y. Araragi, and M. Hongo
    • 学会等名
      World Federation of Hemophilia World Congress
    • 発表場所
      Paris, France
  • [学会発表] 日本の血液事業における肝炎ウイルスの「問題化」――「血液の安全性」をめぐる血友病補充療法の観点から

    • 著者名/発表者名
      本郷正武
    • 学会等名
      第85回日本社会学会大会
    • 発表場所
      札幌学院大学

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi