研究課題/領域番号 |
24730432
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
植田 今日子 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (70582930)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 津波常習地 / 集落 / 集落の解散 / 防災集団移転 / 伝承媒体としての集落 |
研究実績の概要 |
2014年度の研究成果としては、すでに形になったものとして1本の論文(査読有)「来住者を閉ざした津波常習集落ー津波で解散する気仙沼市唐桑町の一集落から」『理論と動態』(7) pp92-116(2014年10月)をまとめた。また同様に震災によって解散の可能性に瀕した集落の祭礼の実施による回復について論じた学会報告を行った(2014年5月15日)。標題は "Why do sufferers of great earthquake conduct the traditional events under evacuation orders?", Internationa Union of Anthropological and Ethnological Sciences Inter-Congress 2014(於:幕張メッセ/日本文化人類学会50周年記念国際研究大会合同開催) 【研究成果(論文)内容】三陸地方の(気仙沼市唐桑町)津波常習集落で津波の被災をきっかけとして解散することになった集落を事例とした。長い歴史を有してきた集落であり、肝入を務めた家の最も古い墓石には元和二(1617)年の没年が刻まれている。明治三陸大津波(1896年)、昭和三陸大津波(1933年)、そしてチリ地震津波(1960年)を乗り越えてきた集落は、平成の大津波(2011年)では9世帯の家を残して解散することになった。それまでも地震のたびに津波を警戒し、名もなき小さな津波も度々訪れてはきたものの、集落に暮らしてきた人たちは「津波を知らない人」にも大津波への警戒を伝えてきた。実際には現在70歳の人は昭和20年以降の生まれであり、昭和8年の津波を実体験として知りようがない。しかしなぜこの三陸沿岸集落ではそれが可能であったのか。集落が解散を迎え、敢えて伝承が途絶える契機に注目し、この課題に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災の影響により、この研究課題の成果をかたちにする場が与えられることで、自動的に促されるように研究を進めることができた。2014年度のアウトプットは決して多いとはいえないが、2014年度から取り組んでいる研究成果のうち、2015年度に公開されるものが複数ある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は本研究課題の最終年度となるため、成果をかたちにすることを中心に取り組む予定である。引き続き現地での調査も継続するが、あくまで成果を仕上げるうえでの補足、補充ということにしたい。2015年度の成果のかたちとしては、学会での発表および学術図書の執筆を目標としている。学術図書に関しては、本研究課題の一部を採録予定である本の出版の助成金(科研費・研究成果公開促進費【学術図書】)を得ることができた。また学会発表については2015年度の日本文化人類学会での報告を予定している。 津波にかぎらず特定の災害の常習性に着目し、あらためて課題としてきた「災害の受容と克服」を(1)適応(2)利用/活用(3)未経験者への伝承という三点からアプローチし、まとめたいと思っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に予定していたインタビュー調査で、先方のご都合が直前まで判明しなかったため。結果的にご予定が判明した時点で、申請書を提出する時間的猶予がなかった。そのため科研費を支出しての調査を行うことができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度も複数回フィールドワーク調査を実施するため、その旅費として支出予定である。
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