東日本大震災が訪れる前から幾度にわたって津波の被災と回復を余儀なくされてきた歴史をもつ社会で、「未曾有」の規模と表現されてきた2011年の津波被害が、どのような社会的、文化的実践によって克服されようとしていたのかについて明らかにした。 集落単位での分析にこだわることで、被災前からルーティンとして執り行われてきた儀礼や祭祀が被災したコミュニティに果たす役割の重要さが明らかとなった。また「津波常習地」とはいっても、人間の寿命をゆうに跨ぐ間隔で訪れる災害へ警戒を伝えることの難しさも浮き彫りとなった。この伝承において必須となっていたのは、人間の寿命を凌ぐスパンをもつ有形無形の伝承媒体の存在であった。
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