本研究は、地域に最も近い身近な媒体として根付いてきた「地域紙」に着目した。資料調査、現地調査、内容分析調査による「地域紙」研究を通じて、地域社会における地域情報の意味、位置付け、災害時及び被災地以外での地域情報提供・流通の在り方について考察するものであり、これにより、地域活性化や被災地の復興に関連する地域情報の在り方について提言することを最終的な目標とした。 平成24年度には基礎資料収集・分析、分析枠組みの設定を行い、平成25年度には、現地調査及び内容分析を行った。平成26年度は「地域紙」の再定義を行った上で、発達経緯に関する詳細な分析等を行いつつ、地域紙における実際の担い手の意識分析をとりまとめ、3年間の総括を行った。 資料調査からは、「地域紙」の定義が曖昧であり、その再定義が必要であることが明らかになった。また発達過程に関しては、明治期における地域紙の誕生から、全国紙との競合、一県一紙政策等の外部要因を照らし合わせて分析することの必要性が明らかになったため、先行研究から地域紙の変容に影響を及ぼした外部要因及び内部要因の分析を行った。地域紙の経営層を対象としたインタビュー調査からは、現在の地域紙の役割についていくつかの興味深い知見が得られた。1)地域環境との高い相関関係、2)紙面における地域性と双方向性の強化、3)新聞本紙以外における多様な事業展開の3点である。また、内容分析からは、創刊当時はマスコミュニケーションの機能代替が主たる要素だった地域紙であっても、近年では生活情報中心に移行すると共に、地域に根ざした取材活動を行うことで地域紙としての存在価値を高めていることが明らかになった。
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