本研究の目的は、風力発電を中心とした再生可能エネルギーを地域社会がどのように受容すべきか、再生可能エネルギーの「社会的受容性」をキー概念とし、「フクシマ」後の日本のエネルギー政策の中で相対的に重要性が増している再生可能エネルギーが、外発型の開発ではなく地域に根差した内発的発展の契機として機能するための条件や、再生可能エネルギー技術の普及に伴う不可避な負担(金銭的・心理的・環境的負荷)を地域社会が受容する条件を実証的に明らかにすることである。 市民出資型再生可能エネルギー事業における聞き取り調査や、3.11以降に再生可能エネルギー事業に参入した事例調査の成果を踏まえ、市民出資型の再生可能エネルギー事業と地域社会の関係性の現状と課題を整理し、再生可能エネルギー事業の地域における社会的受容性と、再生可能エネルギー事業開発と地域の内発的発展の関係性の課題について考察し、ネオ内発的発展論による議論の重要性を指摘した。また、3.11以降における社会学的実証研究の実践性のあり方についても考察した。研究最終年度は、上記の内容に関する国際学会報告、論文(3編)と、書籍の執筆をし、書籍については2015年中に刊行される予定である。 さらに、研究最終年度において、米国ハワイ州における島々における再生可能エネルギーの持続可能性に関する調査も実施し、島嶼におけるエネルギーサステイナビリティと資源管理というテーマの重要性を見出すことができた。日本国内の事例との比較研究によって、再生可能エネルギーの社会的受容性と持続可能性という議論に理論的、実証的、実践的な知見を提供できると考えている。今後の研究課題としたい。
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