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2012 年度 実施状況報告書

ネパールにおける市場化・準市場化と男児選好

研究課題

研究課題/領域番号 24730443
研究種目

若手研究(B)

研究機関福岡県立大学

研究代表者

佐野 麻由子  福岡県立大学, 人間社会学部, 准教授 (00585416)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードネパール / 社会学 / 男児選好
研究概要

本研究の目的は、ネパール社会における民主化、市場化、準市場化とそれに伴う再生産領域の変化を、個人、世帯、カースト・民族(ジャート)から重層的にとらえ、その関連を明らかにすることにある。具体的には、「市場化・準市場化が家父長制的男児選好を加速させている」という仮説のもと、2006年の政変後の「失われた女性たち(男児選好、少女売買、女児の育児放棄)」の促進要因を社会調査の手法を用いて実証的に明らかにすることを目的とした。
本年度は、当初の計画どおり(1)聞き取り調査および先行研究の検討から仮説を導き、それを検証するための質問項目の作成、(2)標本設計を含む質問紙配布の準備を実施した。(1)については「自然資本、物的資本、人的資本(学歴・健康)を欠く人ほど(経済的制度の影響および政治的制度の影響を強くうける。結果として)、男児をより好む」、「自然資本、物的資本、人的資本を欠いても、社会関係資本(相互扶助のネットワーク)をもつ人は(経済的制度の影響および政治的制度の影響をそれほど受けず、結果として)男児選好に陥らない」、「人的資本(学歴)があっても拡大家族に住む人ほど(文化的制度の影響を強く受ける。結果として)、男児選好に陥る」等の仮説を設定し質問項目を作成した。(2)については、計画標本規模を1500としバグマティ・ゾーン下の7つのdistrictを調査対象地域とした。そして、確率比例抽出法で無作為抽出を行い、75のVDC(行政区)を選定した。そして、2月のネパール訪問時に調査協力者に対象地域での調査紙配布を依頼し配布に着手した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

下記の(1)~(4)に記載した当初の計画どおりおおむね順調に研究を遂行することができた。ただし、下記(2)に記載した2006年の政変後の経済的、政治的、社会的動向(市場経済、福祉制度の変遷、機能分化的社会関係の進展)が人々の生活に与える影響を測るためのマクロ指標の分析のみが次年度の課題として残る。
(1)文献調査、資料収集および仮説の設定(5月~7月):男児選好と男女の意識・実践についての質問紙調査にあたっての先行研究の文献調査、仮説の設定を行う。そして、プリテスト用の質問紙を作成する。
(2)ネパール現地調査1(8月~9月の25日程度):政府統計局発行のネパールの基礎的データを入手し、政変後の経済的、社会的、政治的動向を把握する。男児選好についての男女の意識・実践について、聞き取り調査を行い、男児選好についての情報を収集する。また、今日の世帯状況やカースト・民族的つながりについての情報を収集するとともに質問項目の構造および妥当性について検討し、現地研究協力者(社会学MA)と意見交換を行う。そのうえで、プリテストを実施する。
(3)質問項目の確定(10月~1月):プリテストのフィードバックを踏まえて質問項目を確定する。
(4)ネパール現地調査2(2月~3月の25日程度):質問紙について現地研究協力者(社会学MA)と最終的な意見交換を行い、本調査を実施する。人身売買やストリートチルドレンといった社会問題の対応に関わるネパール女性児童社会福祉省、地方行政の児童福祉部門、および現地NGOを訪問し、問題の動向や対応状況についての情報を収集する。また、福祉予算配分の状況等についての情報も収集する。

今後の研究の推進方策

平成25年度の研究計画として、下記を計画している。
1.調査・分析:平成25年度4月~12月の期間に前年度にバグマティ・ゾーン下7つのdistrict計75のVDC(行政区)で配布した質問紙を随時回収する。そして、データ入力、データ・クリーニング、分析を行い仮説の検証を行う。質問紙調査の進捗状況や回収状況にあわせて2回の現地訪問を検討している。その際、ケース・スタディのための聞き取り調査についても継続して実施する。また、平成24年度に着手できなかった2006年の政変後の経済的、政治的、社会的動向(市場経済、福祉制度の変遷、機能分化的社会関係の進展)が人々の生活に与える影響を測るためのマクロ指標の分析を実施する。
2.研究結果についての意見交換:現地の研究協力者と調査結果についての意見交換、議論を行い、26年度に予定している研究成果の公表内容についての打ち合わせも行う。
3.研究成果の発表:調査結果が得られた時点で、学会誌『国際開発研究』に投稿できるよう論文の執筆を進める。3月には分析結果に依拠して報告書の執筆に着手する。

次年度の研究費の使用計画

次年度の研究費については、主に質問紙調査の進捗状況の把握および質問紙の回収のためのネパール渡航費用、質問紙回収およびデータ入力に係る人件費の支出を検討している。詳細は下記のとおりである。
1.ネパール渡航費用:質問紙調査の進捗状況や回収状況にあわせてそれぞれ2週間~3週間程度の滞在で計2回の現地訪問を検討している(日当・宿泊料@13千円×50日、航空賃@181千円×2往復)。
2.人件費:バグマティ・ゾーン下7つのdistrict計75のVDC(行政区)における質問紙回収に係る人件費(@0.5千円×6名×60日)、回収した質問紙(回収率60%の場合は900票)のデータ入力およびデータ・クリーニングのための人件費(@0.5千円×6名×30日)の支出を予定している。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] 開発援助プロジェクトとサステイナビリティ―社会学的制度論からのサステイナビリティの検討2012

    • 著者名/発表者名
      佐野麻由子
    • 雑誌名

      国際開発研究

      巻: 第21巻1/2号 ページ: 47-57

    • 査読あり
  • [図書] 伊藤陽一他編『グローバル・コミュニケーション―キーワードで読み解く生命・文化・社会』2013

    • 著者名/発表者名
      佐野麻由子
    • 総ページ数
      105-122
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
  • [図書] 鈴木紀他編『みんぱく実践人類学シリーズ 国際開発と協働―NGOの役割とジェンダーの視点』2013

    • 著者名/発表者名
      佐野麻由子
    • 総ページ数
      157-192
    • 出版者
      明石書店
  • [図書] Takuo Utagawa ed,Social Research and Evaluation of Poverty Reduction Project2013

    • 著者名/発表者名
      Applicability of Sociological Institutional Theory to the Evaluation of International Development Assistance
    • 総ページ数
      123-140
    • 出版者
      ハーベスト社

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公開日: 2014-07-24  

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