研究課題/領域番号 |
24730444
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
平野 直子 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (10608433)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 代替療法 / 宗教社会学 / 医療社会学 / 身体 / 文化 |
研究概要 |
代替療法の実践を支える意味世界とその再生産プロセスを解明するため、第一年目となる今年は、研究計画上で研究対象としてあげた3つの療法に対し、フィールド調査および文献研究を行った。特に「レイキ」「ホメオパシー」については、これまでアプローチが困難だった団体も含めて調査対象とする団体のほぼすべて(8団体)にアクセスし、フィールドに入ることができた。「マクロビオティック」に関しては文献研究を進め、本研究課題や他の2つの療法との関連性を確定した。 レイキについては、団体の代表者層に対するインタビューが進み、そこから得られた知見によって当初想定していた仮説が大きく修正される可能性が出てきた。得られた知見の一つは、代替療法への深いコミットメントを支えているのが実践者の身体経験や個人史上の危機の経験であることだった。当初は現代メディア等で広く受け入れられている「自然」言説との関係を考えていたが、第2年目においてはこの「身体経験」やライフイベントを重要な媒介項のひとつと想定し、インタビューおよび2年目の量的調査での質問事項を考える必要があると考えられる。 また、代替療法実践が再生産されるプロセスにおいては、メディア接触と同様あるいはそれ以上に、対面的接触のある信頼する個人の関わりが重要であることも、仮説で想定されていなかった知見である。 研究計画では予想していなかったもう一つの成果として、フィールド調査の過程で同じくレイキの研究をしているトロント大学大学院生のJustin Stein氏や、ナイメーヘン・ラットバウト大学大学院生のJojan Yonker氏(いずれも宗教学)などの国外の研究者と連携を取ることができた。彼らからの情報提供により、本課題の研究成果を国外との比較研究へと拓いていく道筋ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インタビュー調査に関しては、当初の計画(第一年目に30名)を満たしてはおらず、現在デプスインタビューの形式で聞き取りを行ったのは6名に過ぎない。しかし「研究実績」欄にあるように、インタビュー以外のフィールド調査の面においては、当初計画していた現代的な心身文化の中にある団体だけでなくこれまでアクセス困難だった「臼井霊気療法学会」(レイキ創始者に直接つながる団体)への聞き取りや参与観察に成功するなど、考察を深めるのに資する貴重なフィールドや資料を発掘することができた。当初は予定していなかった海外研究者との連携が得られたり、研究分担者となっている代替療法の歴史的研究(科研費基盤研究(C)「近現代日本の民間精神療法に関する宗教史的考究 身体と社会の観点から」吉永進一代表)から本課題達成上の重要な知見を得られたりしたことも勘案すると、全体として研究計画はかなり順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
第2年目となる平成25年度の目標は、第1年目の実績によって得られた知見によって半構造化インタビューの構成を修正しつつ、さらに多くの質的データを収集することである。特に本年度は、「ホメオパシー」「マクロビオティック」実践者への聞き取りを強化するため、両療法の推進団体等へのアプローチを強化する。その上で、11月を目標に目標となる30名のインタビューを実施する。 得られたデータは、24年度中に準備した質的分析支援ソフト「MAX QDA11」を利用して順次分析に入る。 また当初予定の通り、本年度の末(2月頃)を目標に、社会調査専門会社のモニターを対象と、代替療法実践に関するインターネット調査を行う。その準備として、8月までに先行研究を探索し、それと質的調査の結果を元に、たたき台となる質問項目を作成し、9月・10月ごろにプリテストを実施する。 また24年度と同様本年度も、代替療法の歴史研究についての基盤研究(C)と連携させながら研究を進行させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、年度末に予定しているインターネット調査費用に40~50万円程度の出費を見込んでいる。その他、インタビュー調査の旅費・雑費として5~10万円程度、その他図書・消耗品費として4万円程度の使用が見込まれる。
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