研究課題/領域番号 |
24730444
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
平野 直子 早稲田大学, 総合研究機構, 招聘研究員 (10608433)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 代替医療 / 医療 / 宗教 / ライフスタイル / 消費文化 / スピリチュアリティ / 健康 |
研究実績の概要 |
2014年度は前年度に引き続き、代替療法「レイキ」と「ホメオパシー」について、フィールド調査と文献収集を行った。さらに今年度は、2012年度・2013年度中に収集した映像・音声・文献資料の整理と統合を進め、研究課題である代替療法実践者の意味世界の描出と構築様態の分析へ向けた作業を進行させた。 代替療法実践者へのインタビュー調査については、質的調査支援ソフト(QDAソフト)の利用を試しながら分析を進めており、2015年度中には学会報告・投稿論文等での発表を目指している。現在のところ、2012・13年度の調査において予想されたとおり、代替療法へのアクセスに影響を与えているのは、メディアを経由した間接的な情報ではなく、家族や知人、実践者どうしなどのフェイストゥフェイスの関係や、健康面や経済面での剥奪的な体験であるという結果が得られつつある。 このことは研究前の想定を覆すものであるが、一方で代替療法を扱うマスメディア記事やイベントは、研究期間を通じて、「癒し」や「スピリチュアル」を主題にしたものから「自然」や「オルタナティブな消費生活」を主題としたもの――筆者が「対抗文化的ライフスタイル消費」と表現している――へと急速に文脈を変えつつあり、この点は本課題の予想通りのようにも見える。ここには、さまざまな個人的な体験により代替療法を推進するに至った団体や個人が、その実践をその時その時の社会においてドミナントな物語と戦略的に結び付けていく様子が表れている。 並行して進行している代替療法に関する歴史的研究課題の進展と国際研究協力からは、「近代の毒/優しい自然」の言説の枠組みをメタレベルで観察・考察する視点が得られた。これにより、医療・宗教・消費文化の境界上にある諸実践の領域にこの図式が深く埋め込まれ、さまざまなバリエーションを生みながら実践相互を結びつけ、再生産していく様子が捉えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究期間中に研究代表者が二度の転居を余儀なくされ、マクロビオティック実践者に対する聞き取り調査はその都度練り直すことになり、大きく遅れてしまった。 また、本研究課題の対象のひとつであるレイキ・ヒーリングに対する調査成果の一部を、2015年8月にドイツで行われる国際宗教史学会(IAHR)エアフルト大会で報告することが決まり、渡航費の一部を本研究費から支出することを計画している。このため、2014年度に実施を計画していたインターネット調査は、ドイツへの渡航費用が判明し、使用可能額が確定するまで延期することになった。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は、IAHRでの支出計画が判明する7月頃から、延期されている代替療法実践に関するインターネット調査の準備を開始し、10月に調査を実施を予定している。 それと並行して、実践者に対するインタビュー調査分析を進めるが、その際に可能であれば、計画していた3つの研究対象のうち遅れの目立つマクロビオティックに関する追加調査を行う。 8月25日には、本研究課題の成果の一部を国際宗教史学会(IAHR)エアフルト大会で発表する。その他、年度中に国内査読誌への投稿を予定している。 また2015年度も、2012~2014年度と同様に、並行する研究課題「近現代日本の民間精神療法に関する宗教史的考究 身体と社会の観点から」(基盤C24520075)と本研究の研究を有機的に連動させ、両研究課題の意義をより高めていくことを目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の成果の一部を用いた報告を、ドイツのエアフルトで行われる国際宗教史学会(IAHR)で行うことが決定した。このため、研究期間を延長し、ドイツへの渡航費の一部を本研究費から支出することになった。また、2014年度に行う予定であった代替療法実践に関するインターネット調査は、この渡航の詳細が決定し、使用可能額が判明するまで延期することになった。
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次年度使用額の使用計画 |
ドイツ・エアフルトでの国際宗教史学会への参加にかかる費用(渡航費等)に20万円程度、代替療法実践に関するインターネット調査に40万円程度を支出することを計画している。
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