従来、人工妊娠中絶の体験は、妊娠した女性にとって「命」と「赤ちゃん」の喪失の経験だとされ、罪悪感を伴うはずだと考えられてきた。中絶を擁護する側も、批判する側も、この前提自体は共有している。 本研究では、中絶の罪責感自体が歴史的には常に「自然」と捉えられていたわけではないことを先行研究から指摘し、人工妊娠中絶を経験した女性たちとそのパートナー、また対象サンプルとして流産死産を経験した女性たちにインタビューを行った。インタビュー結果からは、中絶経験の捉え方と罪責感は、中絶を選択した(させられたけれど、選択を引き受けざるを得ない)という意識や、周囲との関係によって変化することが明らかになった。
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