研究課題/領域番号 |
24730446
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研究機関 | 四天王寺大学 |
研究代表者 |
五十川 飛暁 四天王寺大学, 人文社会学部, 講師 (00508351)
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キーワード | 地域開発 / 地域社会の再生産 / 生活の必要 |
研究概要 |
本研究は、地域社会の持続性を担保しうる開発の条件を明らかにすることを通じて、既存の「上意下達の開発論」に対する「下からの開発論」を展望することを課題としている。本年は研究期間の2年目ということもあり、初年度に収集したデータをより充実させるとともに、踏みこんだ検討をしていくための材料を手に入れることを目指し、文書収集や地元の人びとへの聞き取りをつづけてきた。初年度においては、現場にかかわる住民たちに共通する基本的発想として「生活の必要」という視点があることを確認したが、その視点を踏まえることによって、様々な事象について、一般的解釈とは少し異なる別様の解釈の可能性というものが見えてくることになった。たとえば、今回調査をしている事例のなかには、コミュニティ内に生まれた組織内組織が住民の反対等で次々に機能しなくなる、ということを繰りかえしてきた地域がある。それは一般的にみれば、住民間での足の引っ張りあいを繰りひろげる“ややだらしない”地域といえる。だが、その同じ事象を、そこにいる人びとの「生活の必要」というところからみると、それは住民内のある意見なり立場なりがあまりにも突出しないようにするための、意思決定の調整の仕組みが機能しているということでもあるのが分かってきた。これは一例にすぎないが、地域社会の人びとの営みをそのように捉えなおしていくことによって、地域社会の持続性にかかわる論理に迫ろうと試みている。次年度は、そのような「事例からの捉えかえし」をさらに進めるとともに、その抽象化と一般化をはかっていくことになるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究期間の開始と所属機関の変更が重なったことによって、エフォートが想定どおりに避けなかった。とくに初年度がそうであったが、この2年目においても、所属機関変更の影響が継続したため、遅れを取り戻したとはいえない。とくに本研究の基本的手段であるところのフィールドワークについて、想定ほど進めることができていないため、解釈の材料となるべきデータの蓄積が十分とはいえない。またその結果として、本年度受領額にも残額が生じている。次年度は、この遅れを考慮に入れたうえで、力を入れて進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては、これまでにおいて生じている遅れを取りもどすべく、精力的に研究を展開していく。具体的には、ひとつには研究テーマにかんする解釈の材料となるべきデータの充実である。事例についての資料収集をつづけるとともに、インテンシブな聞き取り調査によって現場の人びとの考え方に迫っていく。もうひとつは、理論的な展開である。そうやってフィールドワークのなかで把握してきた「地域社会の現場の発想」を、地域開発や地域の再生産にかんする先行研究と突きあわせ、あらためて解釈をし、「下からの開発論」として構想していくとともに、その文書化を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の予算に残額が生じたのは、初年度に生じた残額分についてうまく使用できていない(初年度に生じた研究の遅れについてうまく取りもどせていない)からである。 次年度の予算は、本年度予算の残額31万円余りと、平成26年度分の交付額110万円を合計した141万円余りとなる。次年度は研究に生じている遅れを取りもどすべく、精力的にフィールドワークを中心にしてデータの蓄積をつづける予定である。他方、研究課題に関連する学会や研究会にも積極的に参加し、情報収集に努めるとともに、本研究についてのサジェスションを請う予定である。それゆえ、次年度使用する金額の内訳については、旅費の割合が高くなると想定している。加えて、文献や物品(主に消耗品)の購入にも、ある程度の支出を予定している。
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