研究課題/領域番号 |
24730447
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研究機関 | 仁愛大学 |
研究代表者 |
山中 千恵 仁愛大学, 人間学部, 准教授 (90397779)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ポピュラー文化 / ナショナリズム / 記憶 / 観光 / 東アジア / メディア / グローバル化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ドラマやアニメなどのポピュラー・メディア作品の越境的な受容とそれが引き起こす観光行動が、戦争や災害等「負の記憶」を留める場所(「記憶の場」)の観光開発や再イメージ化といかにかかわっているのかを調査し、グローバル化時代の集合的記憶の重層的な構築過程を、社会学的視点から明らかにすることにある。近年「戦争の記憶とメディア」、「負の遺産の利用」をめぐる問題が関心を集めているが、ポピュラー文化的な側面を分析する研究は多くない。本研究では、メディア作品を観光資源とみなす「コンテンツツーリズム」論を介することで両者を接合し、趣味実践を通じた意味構築が、観光開発と苦難の記憶をいかに結びつけ(る/ない)のかという文化政治を考えるものである。 本年度はこれまでの成果を国際学会、研究集会、及び国内学会で報告し、専門家らとの意見交換を行った。また、韓国郊外にある独立記念館や、旧米軍基地に隣接する戦争記念館を調査したのち、現地研究者と意見交換をもった。さらに、ソウルという場所を相対化するために、朝鮮戦争の際に臨時首都となった釜山および、共産・反共勢力による暴動がおこった巨済島捕虜収容所あとを利用したテーマパークの調査を行った。 これによって、わかりやすく「歴史」を伝えるためのポピュラー文化の利用、あるいは、ポピュラー文化と「歴史教育」の分離といった議論はもはや有効性をうしないつつあり、それらの相互浸透にこそ、現在の記憶をめぐる文化政治が存在していることが示せた。これらの調査結果を、来年度に公開していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は最終年度として昨年度までの調査結果を総合し、最終報告を行う予定であった。調査結果の一部については、国際高麗学会において発表し、朝鮮半島およびヨーロッパの朝鮮研究者と意見交換するなどした。さらに、北京日本研究所にて開催されたシンポジウムで、研究土台となっている、ポピュラー文化コンテンツの受容者と観光のまなざしに関する理論的報告を行い、中国におけるコンテンツの活用などを検討している研究者との交流をもった。さらに、獨協大学でアメリカ、シンガポール、韓国から招聘した研究者とともに登壇したシンポジウムでは、韓国における歴史コンテンツのポピュラー文化的な利用・活用の現状と記憶を巡る政治についての考察を行い、さまざまなコメントをうけた。しかし、それらを総合した報告を作成するに至ってはいない。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度においては、これまでの調査結果を総合し、論文執筆を行う予定である。また、この研究成果を研究会及び学会で発表し、海外の研究者とも意見交換の場を持つ。これを通じて、本研究をもとにした、新たな共同研究の可能性を探りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は昨年度までの調査結果を総合し、最終報告を行う予定であった。しかし、年度当初に計画していた韓国調査が中東呼吸器症候群(MERS)の広がりにより延期されたため、これをへて行う予定であった成果報告を後ろ倒しせざるをえなくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度においては、これまでの調査結果を総合し、論文執筆を行う予定である。また、この研究成果を研究会及び学会で発表し、海外の研究者とも意見交換の場を持つ。このための、旅費、翻訳・校正費、専門家謝礼、郵送費等、公開にかかる費用として使用予定である。
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