本研究の目的は、ポピュラー・コンテンツ目的の観光行動と「負の記憶」を留める場所の観光開発の間の力学に注目し、グローバル時代の集合的記憶の重層的な構築過程を社会学的視点から明らかにすることにあった。各国・地域における調査を通じて、ポピュラー文化の非場所的な性質が逆にローカルな「記憶」を掘り起こしていくプラットフォームとなりうること、しかし「歴史」を伝達する手段としてコンテンツが作成されるとき、受容される側のポピュラー文化理解の文脈において再解釈されてしまう可能性があること、「負の記憶」の在り方が複数の集団に争われているような場合、ポピュラー文化の娯楽性に回収される可能性があることが分かった。
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