心理主義化と参加型社会の形成

2014 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 24730452
• 研究機関: 立命館大学
• 研究代表者: 崎山 治男 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (20361553)
• 研究期間 (年度): 2012-04-01 – 2016-03-31
• キーワード: 心理主義 / 感情労働 / スピリチュアリズム / 生-権力

研究実績の概要

本年度の研究実績は心理主義化と社会への動員過程についての基盤的な理論的研究と、その応用例として対人関係マニュアルを分析した実証研究に大別出来る。
前者の理論的研究に関しては、M.フーコーや彼の理論的影響を強く受けたN.ローズ、J.アガンベン、ネグリらの理論的視座を受け継ぎ、心理主義の進展がフラット化・グローバル化するサービス産業の中で展開するありさまを検討した。その中でも特に、グローバル化とフラット化により、従来型の労働集約的産業が途上国やインナーコロニーへアウトソーシングされる一方で、対人関係能力が強調され、必要とされる感情労働が先進国・中核部分で個々人の労働のみならず「生」のありようを規定するものとなることを指摘した。
後者の実証研究に関しては、前年度に引き続き、90年代以降の日本社会における大衆心理学ブームを背景としながら、就職・恋愛・結婚・老後といったライフコースが心理学的な知に覆われていく過程を分析した。その中では、まず、それぞれのライフコースのステージが次第に「〇〇活」とし、動員過程へと塗り替えられていくことと、その中で心理学ブームが果たした役割を分析した。その上で、個々人の生・ライフコースの変容可能性/不可能性が、前者が臨床倫理学的な知を活用した自己啓発で覆われる一方で、後者がスピリチャリズムと運命論へと回収されていくありさまを分析した。
このように、本年度も前年度に引き続き、現代日本社会における心理主義の深化について研究を行った。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画に記載した形での、現代社会理論・哲学理論を心理主義化・統治理論として深化させることは出来ている。またそれと相互反映的に進める予定であった現代日本社会を素材とした心理学ブーム、心理主義と感情労働への動員の分析も順調に進んでいる。
ただ、成果発表として予定していた単著の刊行が一年度ずれて、平成27年度予定となった点が当初予定より遅れている。

今後の研究の推進方策

上述したように、本研究課題の理論的基盤と実証的な分析そのものは予定通り進んでいる。今後はその成果発信のスピードを速めるとともに、それと相互に補強しあう形での分析の一層の深化を進めたい。