研究課題/領域番号 |
24730453
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
上野 淳子 桃山学院大学, 社会学部, 講師 (30582788)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 都市社会学 / 空間構造 / 地域格差 / 人口移動 |
研究概要 |
本研究の目的は、大都市とその周辺地域の関係に注目して多様な空間スケールから空間構造の分析を行い、開発政策の転換の影響を実証的に解明することにある。グローバルな経済競争が激化した1980年代以降、大都市の政策立案者のまなざしはグローバル・エリートや海外からの観光客へ向けられ、国土開発の方針は国土の均等発展から「選択と集中」へと移行した。近年の都市政策や国土開発の方針転換は、大都市に人や資源を供給してきた周辺地域を疲弊させ、大都市の活力の基盤を掘り崩す可能性がある。本研究では1980年以降の30年間について、(1)東京および国土の開発政策の動向、(2)都市内の空間構造およびその後背圏を含めたマクロな地域構造の変動を分析した上で、(3)政策の変容がいかなる空間的および社会経済的帰結をもたらすかを検討する。 初年度にあたる2012年度は、次の基礎作業を実施した。 1.国土開発の方針や東京、大阪の都市開発政策に関する文書資料の収集と整理を行い、全体的な傾向の把握に努めた。 2.大都市内および大都市圏-非大都市圏の人口移動の動向を検討するために、国勢調査等の統計データを整理・分析した。1990年代後半からの都心人口の回復は全国的に大都市で共通する傾向であるが、大都市圏への転入超過数は東京圏が突出して増加しており、社会経済的な背景の検討を要する。また、東京圏では東京圏出身者の比率が増しており、周辺地域との人的な結びつきが弱まっていると言える。 3.大都市と周辺地域の結びつきについて周辺地域の側から考察するために「限界集落」化する山村の全戸調査に参加した。近隣都市における労働市場の発達とそれへのアクセスビリティの向上が、「限界集落」の維持に一定の効果をもつことがうかがわれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
政策関連の資料収集および国勢調査データの整理・分析は当初の予定通り進行している。 大都市論および地域構造分析の理論枠組みについては、都市研究者との議論を通じて、検討段階にとどまっており、この点は当初の予定より遅れていると言わざるを得ない。他方で、他の科学研究費プロジェクトや山村調査への参加によって得られたデータを用いることで、東日本大震災後の節電を通じてあらわになった東京内の格差や東京と東北との結びつき、東京以外の大都市圏における都市―村落関係を検討できたため、全体としては「進展があった」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
A. 今後は、大都市論および地域構造分析の理論研究と分析枠組みの検討を中心に展開する。 B. 空間構造の分析については、主に東京を対象としながら、大阪等との比較を行う。まずは都市空間構造の変容を検討し、さらに、周辺地域を含めた地域構造の変容を検討する。 C. 開発政策については資料収集と関係機関・諸団体への聞き取り調査を継続し、開発政策と空間構造の関連分析への見通しを立てる。
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次年度の研究費の使用計画 |
A. 設備備品:大都市論・地域構造分析および政策の関連図書 20冊×5千円 B. 消耗品:雑誌文書資料 C. 国内旅費:調査研究旅費および成果発表旅費 D. その他:複写費
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