研究課題/領域番号 |
24730453
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研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
上野 淳子 桃山学院大学, 社会学部, 准教授 (30582788)
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キーワード | 都市社会学 / 空間構造 / 地域格差 / 人口移動 / 都心回帰 |
研究概要 |
2年目にあたる2013年度は以下2点を中心に研究を行った。 (1)大都市内の地域構造および周辺地域との結びつきの分析:国勢調査等の官庁統計を使用した人口移動および産業基盤の分析、民間企業が提供するマンションデータ等をもちいた不動産市場と都市再開発の動向の分析、調査票調査データによる都心マンション住民および「限界集落」住民の分析を行った。1990年代後半に日本の主要都市では都心人口が再増加に転じ、都心で急増した分譲マンションは都心内移動や郊外からの都心回帰層の受け皿となっている。しかし、大都市をとりまく状況や再増加した都心人口の内実は欧米のジェントリフィケーションの議論、Klaassenらの都市発展段階仮説の想定とは大きく異なり、日本の中でも都市によって人口の吸引力、都心居住者の階層や世帯構成の点で違いがあることが明らかになった。 (2)自治体の開発政策、開発方針の聞き取り・資料収集:2013年度は大都市都心の自治体を中心に聞き取り・資料収集を行った。自治体の都市計画が都市再開発に与える影響は大きく、1990年代における東京都中央区の都市計画の規制緩和はマンション供給の飛躍的な増大につながり、また2000年代の札幌市中央区の都市計画は再開発の内容や実施地域に影響している。他方で、再開発が生み出す問題(環境の悪化、公共サービスの不足、住民間の分断、開発地域の偏り等)については自治体の対応が後手にまわり苦慮している。 以上の成果は、一部を地域社会学会第38回大会で報告するとともに、論文化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年度は、都心自治体の都市計画・開発政策の聞き取り、都市の空間構造の変容の分析の点で大きな進展があった。他方で、大都市圏と周辺地域の結びつきや都市の違いに関しては仮説段階にとどまっており、大都市側からだけではなく「限界集落」側からの視点をふくめて今後さらなる情報収集・分析を行ったうえで、議論の取りまとめを行っていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2014年度は、これまでの分析と議論の取りまとめを行う。 特に、大都市と周辺地域の結びつきを中心に取り上げながら、開発政策の転換の影響を検討していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末に予定していた調査票調査のデータ入力費について、回答者の記述量のばらつきが大きく費用の事前予測が困難だったため、年度末に多めに費用を残していたため。 東京および札幌における聞き取り調査や資料収集のための交通旅費として使用する予定である。
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