平成25年度は、平成24年度から行ってきた当事者(HTLV-1キャリア、HTLV-1関連疾患の患者、キャリア・患者の家族)への調査範囲をさらに拡大し、前年度より多数かつ多様な当事者に対するインタビュー調査を実施することができた。調査対象者との関係もさらに深まり、補助が終了した今後もさらに調査を重ねることが可能となった。 また一方で、厚生労働省が元になって結成されたHTLV-1対策推進協議会の動きに対する研究も展開し、同協議会における議論のありようを分析する論文を平成25年度に発表することができた。 以上が平成25年度の主な成果であるが、研究機関全体を通じての成果としては、以下の2点が挙げられる。第1に、研究代表者が専攻する社会科学の領域においてはこれまでほとんど取り上げられてこなかったHTLV-1関連疾患に対して、社会科学的な研究の端緒を開くことができたことである。これにより、社会科学領域におけるHTLV-1関連疾患に関する研究が活発になることが想定される。また、社会科学領域からの研究が蓄積されることで、HTLV-1に関する社会的な関心も醸成されると考えられる。第2に、研究代表者が所属する機関における教育に研究成果を還元できたことである。研究代表者は保育者養成機関に所属していたため、母乳感染をするHTLV-1を教育の題材として取り上げ、病んだ者の実体験を紹介しながら、保育者(等福祉従事者が)病んだ当事者の心に寄り添うことがいかに必要かを示してきた。研究そのものではなく付随するものであるとは言え、これも成果の1つとしたい。 なお、今回の科研費による補助は平成25年度で終了するが、当然今後も、今回の補助で得られた成果を元にしてさらに研究を積み重ね、HTLV-1の社会学的研究の体系化を進めていくこととする。
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