ハンセン病国家賠償訴訟(1998~2001年)後のハンセン病をめぐる社会規範の変化、退所者や非入所者への社会的・経済的な恒久的支援の実施、さらには一部療養所での病棟への保険入院の開始や保育所・福祉施設の誘致など、療養所の社会化は進展している。その一方で、全国の療養所の入所者は1700人にまで減少し、入所者の平均年齢は83歳を越え、終末期ケアが大きな課題となっている。特に、隔離政策により家族・社会関係が希薄な入所者にとって、尊厳ある看取りはより重要な課題となっている。本年度は、療養所の終末期ケアの現況を把握するため、ハンセン病療養所看護職・入所者等に対するインタビュー調査を実施した。その結果、認知症の増加など高齢化により個々の入所者の生活経験や歴史を看護職が汲み取りづらくなっていること、入職年数の長い職員が減少し、療養所の歴史を十分に共有していない看護職が増え、個々の入所者の生の経験を共有できていないことなど、従来のハンセン病看護の特性が薄れてきていることが示された。さらに、高齢化による療養所内の配偶者、世話人・後見人、知人の死亡・喪失や、入所者自治会の機能低下に伴い、治療方針の決定が職員優位になるのをどのように防ぐかなど、終末期ケアをめぐる課題も増加していた。
|