研究課題/領域番号 |
24730460
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
伊丹 謙太郎 千葉大学, 人文社会科学研究科(系), 人文社会科学研究科特別研究員 (30513098)
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キーワード | 賀川豊彦 / 社会事業史 / 協同組合運動史 / セツルメント / 社会福祉思想 / 社会的企業 |
研究概要 |
本研究では、関東大震災後の賀川豊彦と同労者の実践の経験を通して、現代におけるコミュニティ開発や社会事業・協同組合運動の展開の可能性について検討している。とりわけ、セツルメントをモデルとした地域における住民とセツラーや現代NPOの実践家との間の協働を持続可能なものにする上での方法論に賀川たちの取組事例を昇華させることを最終的な成果とする予定である。旧東京本所区における賀川ミッション(本所基督教産業青年会)の同労者たちの実践が主たる対象となるが、2013年度は、前年度において資料整理・分析の承諾を得た本所賀川記念館・東駒形教会に継続的に通い、当該未公開資料の整理を行った(2013年8月・2014年3月に中間成果を刊行)。産業青年会の財政状況や、事業分離した江東消費組合・中ノ郷質庫信用組合などの協同組合団体との関係のほか、直面した大小の課題などを時系列的に並べることで本所地区を中心とした賀川同労者たちの事業展開の姿が浮き彫りになってきた。また、賀川と同労者たちが地域協働の最善の手段と考えた協同組合運動が今日の社会においてどのような位置にあり、地域づくりにおいていかなる固有性をもったものであるのかを検討する(現代に繋げていく)ために、1920・30年代という局所的な賀川たちの運動だけではなく、戦後の協同組合運動史(とりわけ購買生協運動および協働労働の協同組合)およびソーシャル・セクターの動静についても研究を進め、最終年度の研究に向けた足がかりをつかむことができた(2014年5月刊行予定)。また、賀川豊彦全集に収録されるにあたって多くの編集が加えられていることや、初版以外のもの(底本不明)を底本としているなど、今後の賀川研究において問題もあったため、あらためて賀川豊彦の初版本作品をデジタル化した資料集を『賀川豊彦セレクション1』として主要10作品を監修・刊行した(2014年2月)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本所基督教産業青年会における賀川豊彦同労者たちの親族・知人を対象にしたインタビューにおいて明らかになった点も複数あるが、庶務日誌等産業青年会の資料と照らし合わせて検証する必要がでてきた。当該同労者自身の手記・日記や公刊資料などにおいても、重要と思われる箇所で同労者間で日付の違いなど記憶違いを原因とした誤記が相当数見られる。こうしたつきあわせ作業が相当数必要になった点、それに必要な産業青年会の庶務資料・官公庁に提出した社会事業調査回答文の記録などをデータベース化する作業、現代の協同組合運動との接続を意識した戦後協同組合運動史の検討など、本年度に改めて地固めの作業が集中したことにより研究に遅れが出てきている。
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今後の研究の推進方策 |
インタビュー調査等において明らかになった諸点について、しっかりと実証していくために、早急に文字資料のデータベース化を完了させる予定である。これにより、本所基督教産業青年会の多角的事業展開と江東消費組合や中ノ郷質庫信用組合の事業分離の実態などを確認し、同時に戦後協同組合運動史から今日の地域協働のあり方まで繋げる道筋として協同組合型の社会事業体を対象としたモデル分析のほか、研究協力者とともに、生活困窮者を対象とした意識調査を前半期に行い、それらを総合した形で最終成果に結び付けることを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画にあったインタビュー中心の研究を推進するなかで、対象者間の事実認識の食い違い(日付など)を解消する目的で、史資料(当該団体庶務部作成)と照らし合わせる必要が生じた。この作業が入ることで、旅費および研究会等開催にあてる謝金の執行が遅れている。 すでに新しい調査旅行計画や研究会開催の予定が定まりつつあるので、最終年度にあたる本年度前半期において遅れを取り戻し、秋以降には当初計画のスケジュール通りに進行させるよう計画している。
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