研究課題/領域番号 |
24730463
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
廣野 俊輔 大分大学, 教育福祉科学部, 講師 (60626232)
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キーワード | 自立生活運動 / 自立生活センター / 障害者運動 / 障害者福祉 / アドヴォカシー |
研究概要 |
今年度の研究成果は以下の5点である。第1に日本の自立生活運動がどのようにアメリカの自立生活運動を受容したのかを明らかにすることを目的として、雑誌『リハビリテーション』に「ミスタードーナツ障害者リーダー育成海外研修派遣事業と障害者の自立生活」を執筆した。この論文において申請者は、日本の自立生活運動が、アメリカの自立生活運動に一定の違和感を感じつつも積極的に吸収したことを明らかにした。また、その背景には企業の社会貢献活動があったことも併せて明らかにした。 第2に韓国において、自立生活運動の拠点となる自立生活センターを訪れた。訪問したのは、同志社大学大学院修了後、韓国の自立生活センターの勤務経験をもっていた金恵美氏である。金氏から韓国の障害者福祉の状況、自立生活運動の情報について聞き取りを行った。 第3に、日本の自立生活運動の源流の1つである府中療育センター闘争についての検討を行った。この検討は、大分大学福祉社会科学研究科の紀要である『福祉社会科学』第2号に「府中療育センター闘争の背景 : なぜ,この施設で闘争は起こったのか」として収録されている。この運動の流れは、日本の主流である欧米から流入した自立生活運動とは異なるが、その一部は合流している。 第4は、自立生活運動の研究を通して、立教大学社会福祉研究所主催公開セミナー「多元的共生社会の構想―『自立と福祉』から『多元的共生社会』へ」にコメンテーターと参加したことである。障害についてのみならず、多様な視点からマイノリティとマジョリティの共生について議論することができた。 第5は、『よくわかる障害学』の分担執筆である。執筆担当の正式な名称は字数の制限から省略するが、障害者運動、障害者と移動、制度等を担当した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者がおおむね順調だと判断する理由は次の4点である。第1はアメリカの自立生活運動と日本の自立生活運動についてその接点を明らかにした論文を執筆することができたという点である。第2に韓国の自立生活センターの関係者に聞き取りをすることができたという点である。今後この点についてさらに検討を重ねたい。第3に日本の自立生活運動についても納得のいく論文が執筆できたことである。今後はより現在に近い運動を取り上げることで、日本的な自立生活センターがいかにして構築されていったのかを検討したい。第4に研究する上でのネットワークの拡がりである。前年度、主催:科研費プロジェクト(基盤研究(B)課題番号22330177)「障害者運動とソーシャルワークの協働と葛藤―国際比較による実証的研究」主催のプロジェクト、「障害学の日韓交流」で報告した際に、韓国京畿大学の趙源逸教授と交流するきっかけを得た。趙教授は、今年度、申請者が所属している大分大学を来訪する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、次の3点を挙げることができる。第1は、日本の自立生活運動史について現在までの通史を完成させることである。具体的には、現在までの研究で手薄になっている1980-90年代のそれに関する論文を執筆することである。第2に本申請のタイトルである自立生活センターのあり方についてさらに検討することである。具体的には、筆者が現在関わっている大分市の自立生活センターを事例として、それが果たしているアドヴォカシー機能を検証することである。さらに、これまで関わりがあった京都市の自立生活センター、そして、できるだけ多くの類型の自立生活センターを検証したいと考えている。第3に、障害者運動のアジアへの伝播をテーマに検討を続けるという点である。日本の自立生活運動が、アジアの障害者福祉や障害者運動にいかなる影響を与えているのかを研究すべきであると考えている。そして、研究の最終年度である本年度においては、これまで積み重ねてきた研究成果を整理し、その成果を明確にする必要がある。
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