本研究では自立生活センターのアドヴォカシー機能について、次の観点から研究を行った。第1に,今日日本に普及した自立生活センターが果たしているアドヴォカシー機能がいかなる歴史的背景によってもたらされているのかという点である。第2に自立生活センターにおけるアドヴォカシーの機能が,自立生活センター全体の業務の中でいかなる位置づけを与えられているのかという点である。まず,第1の点から述べたい。 日本の自立生活運動はしばしば時代によって異なる団体が取り上げられ,その上でそれらの諸団体が時系列に並べられ,それが歴史として語られてきた。具体的に言えば,1970年代に台頭した障害者解放運動の流れと1980年代以降に普及する自立生活センターの流れが,あまり説明されることなく,接合されている。これらの2つの流れは確かに,共通点ももつのだが,それらは検討されることがなかった。本研究の知見によれば,次の点が指摘できる。すなわち,CILに直接的な影響を与えるのは,1960年代後半から注目されるようになった障害者の生活圏拡大運動や福祉のまちづくり運動と言われる流れである。たとえばその1つに車いす市民全国集会があり,日本におけるCILの初期の加盟団体はそちらに加盟していた団体の方が多い(もちろん,障害者解放運動からCILへという流れはゼロではなく,その場合は地域の拠点から福祉関係の事業という場合が多い)。 第2の点については,京都市の日本自立生活センターを事例にしながら検討をすすめた。この団体では,障害者総合支援法等の事業の他に事業外の地域作りや障害の有無にかかわらない仲間作りを行っている。もともとは任意のグループだったが、地下鉄の駅にエレベーターを作る運動を契機に活発化していく。事例から断定的に結論を導くことはできないが,事業体であることと運動体であることは必ずしも矛盾をもたらすわけではないといえよう。
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