研究課題/領域番号 |
24730465
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
堅田 香緒里 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 助教 (40523999)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 婦人保護 / ジェンダー / ベーシックインカム |
研究概要 |
本研究は、従来の福祉国家への批判・反省を異なる文脈において形成してきたベーシックインカムとフェミニズムの交差に立脚しながら、新しいフェミニスト社会政策のあり方を再考することを目的としている。 研究初年度は、その予備的作業として、既存の福祉政策が内包する問題点を、フェミニズムがどのように明らかにしていったのかを再整理した。とりわけ、既存の福祉国家のジェンダー分析が見落としてきたもの、そして様々な福祉政策が、特定の人々を包摂する一方で、排除してきたものに焦点化した。 既存の福祉政策の多くが、「標準家族」(男性稼得者/女性家事従事者モデル)に依拠して設計され、そうしたモデルを維持・強化する役割を果たしてきた、という問題点は、既に多くのフェミニストの研究蓄積によって明らかにされてきた。その一方で、そもそもそうした「標準家族」の形成に失敗した単身女性の問題に光があてられることは多くなかった。そこで、本年度の研究では、これまでの福祉国家のジェンダー分析が見落としてきた単身女性の問題を、とりわけ日本の社会福祉政策やその周辺においてそれらがどのように扱われてきたのかに着目し、明らかにした。 日本の社会福祉事業で唯一「単身女性」をその対象としているのは、売春防止法に規定されている婦人保護事業である。戦後まもなく成立して以来、60年近く大きな改正のないまま維持されている同法が、その他の福祉政策と並んで遂行的に女性に与え続けている社会的位置を明らかにした。(研究成果は、堅田香緒里(2012)「女/貧困/福祉―主婦と売春婦の分断と共謀」『現代思想』2012年11月号、他。)
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、従来の福祉国家への批判・反省を異なる文脈において形成してきたベーシックインカムとフェミニズムの交差に立脚しながら、新しいフェミニスト社会政策のあり方を再考することを目的としている。 本年度は、3年間にわたる研究の初年度にあたるが、これまでフェミニズムが提起してきた福祉国家のジェンダー分析を再考し、それが見落としてきたものを明らかにした。その研究成果は、堅田香緒里(2012)「女/貧困/福祉―主婦と売春婦の分断と共謀」(『現代思想』2012年11月号)および、Kaori KATADA(2012)Basic Income and Feminism: in terms of “the gender division of labor”(14th International Congress of the BIEN)で発表した。 来年度は、ベーシックインカムという政策構想が問題提起する既存の福祉国家の課題を再整理し、最終年度にそれらを統合し、研究成果をまとめる予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は、従来の福祉国家への批判・反省を異なる文脈において形成してきたベーシックインカムとフェミニズムの交差に立脚しながら、新しいフェミニスト社会政策のあり方を再考することを目的としている。 本年度は、3年間にわたる研究の初年度にあたるが、これまでフェミニズムが提起してきた福祉国家のジェンダー分析を再考し、それが見落としてきたものを明らかにした。そのうえで、来年度は、ベーシックインカムという政策構想が問題提起する既存の福祉国家の課題を再整理し、最終年度にそれらを統合し、研究成果をまとめる予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、今年度の研究成果を国内および海外の学会で報告する予定である(旅費、学会参加費)。なお、来年度への繰り越し分(約7万円)については、国内の学会報告の旅費・参加費に充てる予定である。 また、資料収集のために、いくつかの電子機器を購入予定である(USBメモリ、等)。
|