研究課題/領域番号 |
24730469
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 文京学院大学 |
研究代表者 |
松本 瑞穂 文京学院大学, 人間学部, 助手 (60588010)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ドイツ |
研究概要 |
平成24年度調査では創設史に関するデータはあまり集まらなかった。主に、ナチの過去を抱えるドイツ福祉団体の歴史研究者に対する警戒心が原因であるが、それでも、今回の調査でわかったことを簡潔に記す。 レーベンスヒルフェ・ベルリンが運営するインテグレーション保育所、iKitaを視察した。「インテグレーション」教育というと、日本の文脈では一般的に「障害児とそうでない子ども」の統合教育が連想されるが、ここでのインテグレーションの対象はもっぱら外国人(移民)であった。トルコ系が圧倒的に多い。子ども向けのみならず、移民の母親向けのドイツ語教育など、多様なプログラムが準備されていた。 なお、当所長に財政面についてヒアリングしたところ、「設置・運営資金はほとんど国からの補助金である」との説明があった。これは、筆者がこれまで実施してきた調査ではわからなかった部分であった。レーベンスヒルフェ中央本部は「寄付金で運営している」との主張を崩していない。しかし、寄付者のリストがなかったり、収支表がないなど、不明瞭な点も多かった。今回、中央本部を離れてベルリンという地域レヴェルでヒアリングしたことで、より実態に近い情報が得られたように思う。 ただし、中央本部の意図として、スティグマの回避のためにあえて戦略的に「寄付金で運営」と強調している可能性もある。この点は今後も調査をしていきたい。 また、視察日にいた障害児は、重度身体障害児1名、ダウン症児1名であった。ダウン症児は自由に行動していたが、重度身体障害児のほうは終日、母親が付きっきりであった。これは、重度身体障害児に関しては保育機能は弱く、療育教室のような機能しか果たせていない可能性を示唆している。 以上をふまえて、今後も調査を続けたい。具体的には、日本の統合保育との比較や、レーベンスヒルフェ創設史に関するアプローチの継続を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度調査では創設史に関するデータはあまり集まらなかった。主に、ナチの過去を抱えるドイツ福祉団体の歴史研究者に対する警戒心や、筆者の海外調査可能時期とドイツのバケーション時期が重なる、などが原因である。 しかし、研究実績にも記したように、科研獲得以前から自費で実施している期間も含めれば述べ6年以上になるレーベンスヒルフェ調査で不明であった財源に関する疑問が今回明らかになるなど、一定の成果は出ている。 今後も、創設史を知る人物を粘り強く探し、アプローチしていくなど、より達成度を上げるための努力をしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、創設史を知る人物を粘り強く探し、アプローチしていくなど、より達成度を上げるための努力をしていきたい。創設者のトム・ムッタースは高齢であるが存命である。しかし、ムッタースやその家族へのヒアリングが難しい状況にあっては、当時を知る職員や、当時、院生としてレーベンスヒルフェに出入りして修論を書いた人物など、周辺からアプローチしていきたい。 また、それと並行して、地域史調査も実施していきたい。平成24年度は手始めにベルリンの統合保育所を視察したが、レーベンスヒルフェ・ベルリンの創設史も調査していきたい。また、バイエルン州のいくつかの特別支援学校や特殊幼稚園の視察の内諾もすでに得ているため、バイエルン州の地域レヴェルでの歴史も調査していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度と同様、旅費での支出が100%であると思われるが、手に入れた資料を日本へ送付するための運賃や、現地での付き添い人への謝金に若干使用する可能性もある。
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