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2012 年度 実施状況報告書

女性聴覚障害者の職業選択と就労に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 24730472
研究機関昭和女子大学

研究代表者

吉田 仁美  昭和女子大学, 人間社会学部, 助教 (20566385)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード日本国内
研究概要

平成24年度は、主にインタビュー調査を実施した。調査協力者は12~15名程度を予定していたが、最終的には18名になった。調査協力者は、きこえない女性の団体“Lifestyles of Deaf Women”、DPI女性障害者ネットワークのメーリングリストで参加者を呼びかけ、募集した。23名からの応募があったが、調査参加者の条件(高等教育卒業後に就職し、職業経験が2年以上の女性聴覚障害者に限定し、年齢構成は20代後半から就職活動の時期が男女雇用機会均等法対象者である40歳代半ばまでとした)に当てはまる18名の女性聴覚障害者から協力を得た。調査実施時期は平成24年9月から平成25年の3月までであった。
調査方法は、すでに上記でふれたとおり、インタビュー調査(半構造化インタビューを基本とし、一部デプスインタビューを取り入れる)を用いた。吉田がインタビュー対象者の希望場所に伺いインタビュー調査を行うことにしていたので、調査対象者の自宅、職場にうかがうこともあったが、多くは大学の研究室(大学2号館東棟5T45)で行われた。インタビューは吉田による手話、口話(補聴器を用いた聴覚活用をあわせた会話手法)、音声会話が中心であり、場合によっては筆談等で補足した。その際、手話でのインタビューの場合は記録用にビデオカメラで撮影し、会話が可能な聴覚障害者を対象とした場合には、ICレコーダーで記録をとった。これについてはすべて調査協力者の了解を得ている。
以上の調査実施にあたって、昭和女子大学倫理委員会に申請し調査の許可を得ている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2006年に採択された国連の「障害者権利条約」、UNESCOのEducation for Allの提唱、教育基本法の改正、あるいは、大学や企業の社会的責任の高まりに見られるとおり、近年、高等教育における障害者支援の問題は、わが国において重要な政策課題の一つに掲げられている。
本研究はこうした流れと呼応して、高等教育卒業後における女性聴覚障害者の就労に視点を当てた研究である。聴覚障害に限定した理由は、聴覚障害者の就労に関する研究が非常に少なく、さらに女性聴覚障害者に限定するのは、女性であることと、障害をもつことで、社会において二重の不利益を被り、自立がより困難な状態におかれている事実があることによる。近年、女性聴覚障害者の高等教育進学率の高まりに伴い、卒業後の活躍の場が広まってきている。しかし、彼女らの就労の実態を捉えた研究は国際的にみても数少ない。本研究はこうした問題意識の基本に立ち、聞き取りインタビュー調査を中心に行われた。現在は、調査のデータ分析を実施しているが、今回の調査協力者はすべて高等教育卒業以上であり、なおかつ職業にありついている人たちであった。18名のうち、5名は企業勤務(すべて一部上場企業)、5名が高校・大学の教職員、フリーランス・自営業が3人、NPO等の非営利団体が3名、公務員が1名、病院勤務が1名という結果であった。そのうち、教員、看護師等の専門職で勤務している人が5名であった。専門職として働いている5名は大学入学前からのキャリアデザインが明確である一方で、それ以外の職種(企業、フリーランス等)は、大学卒業後に転職を経験している人が多くいた。専門職についている5名のうち4名は大学院修士課程あるいは博士後期課程修了者であり、高学歴者が多くいたことも特徴的であった。また年齢は30歳代が一番多く11名、20歳代が5名、40歳代が2名という構成であった。

今後の研究の推進方策

平成25年度は、調査の分析を行い、日本社会福祉学会等で発表、論文の投稿を実施する。調査協力者には、異なる三つのタイプ「ろう者」「ろう・難聴者」「難聴者」に分類されるが、それぞれの三つの異なるタイプがどのような職業選択を行い、就労後のキャリア形成にどのような特徴がみられるのか、アイデンティティとの関連はあるのか、あるいはそれほど差異はないのかを分析・考察する。なお調査分析のポイントは以下のとおりである。
(1)個々人の聴力レベル、聴覚障害者として自身のアイデンティティはどのようなものであるかを確認し、(2)現在の仕事内容について質問し、(3)仕事に就くまでのプロセスや就労後のキャリアについて、仕事内容や職場の人間関係等、(4)そのほか聴覚障害を持ちながら働くことに際し、どのようなバリア(障壁)があるのか、「人と環境の相互作用」の視点からアプローチする。これらの一連の過程において当事者視点からのアプローチにより掘り下げを行う予定である。
さらに加えて、本研究はジェンダー、女性視点による分析・考察を行うので、国際的、国内的な障害者ジェンダー統計整備についても同時に調べ、整理する予定である。障害者ジェンダー統計については、経済統計学会ジェンダー部会で発表予定である。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度の研究費使用計画は以下のとおり予定している。
1設備備品(文献資料)100,000円、2消耗品(論文別刷等)100,000円、3旅費交通費(成果発表)日本社会福祉学会等100,000円、4人件費謝金(英文校閲等)200,000円、5その他(印刷・通信費)504,000円である。
1の文献資料は、研究に必要な国内・国外の文献を使用予定である。2の論文印刷は成果発表した論文の印刷抜き刷りに使用予定である。3の旅費交通費は、日本社会福祉学会等(北海道:北星学園大学)で発表予定のために使用予定である。4の人件費は論文を英文で作成予定のため、人件費謝金に使用予定である。5の印刷製本費は平成24年度に実施した調査報告書の作成と協力者及び希望者に郵送予定の通信費として計上した。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 「バングラデシュにおけるソーシャル・ビジネス―現地での視察・体験報告から―」2013

    • 著者名/発表者名
      吉田仁美
    • 雑誌名

      学苑 人間社会学部紀要

      巻: 868号 ページ: 71-81

  • [学会発表] Research on the Usefulness of Closed Captions on TV Commercials②-Shared Needs of the Hearing-Impaired and People over 60-2012

    • 著者名/発表者名
      Shigeki Inoue, Hitomi Yoshida, Daiki Ayuha, Koichi Utagawa, Sumie Kaminaga, Kuniomi Shibata
    • 学会等名
      The 4th International Conference for Universal Design in FUKUOKA 2012
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡県)
    • 年月日
      20121012-20121014
  • [学会発表] Research on the Usefulness of Closed Captions on TV Commercials③-Closed Captioning as a Form of Advertising Expression-2012

    • 著者名/発表者名
      Kuniomi Shibata, Koichi Utagawa, Shigeki Inoue, Hitomi Yoshida, Daiki Ayuha
    • 学会等名
      The 4th International Conference for Universal Design in FUKUOKA 2012
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡県)
    • 年月日
      20121012-20121014
  • [学会発表] ろう難聴女性と情報発信2012

    • 著者名/発表者名
      吉田仁美
    • 学会等名
      日本福祉のまちづくり学会第15回大会
    • 発表場所
      福岡県北九州市 西日本工業大学(福岡県)
    • 年月日
      20120825-20120827
  • [図書] 保育者養成シリーズ 社会福祉2013

    • 著者名/発表者名
      林邦雄・谷田貝公昭〔監修〕、山崎順子・和田上貴昭〔編著〕
    • 総ページ数
      11頁
    • 出版者
      一藝社

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公開日: 2014-07-24  

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