最終年度となる平成25年度は、前年度に実施したインタビュー調査の分析を行った。インタビューは、本研究の目的に沿って、高等教育を卒業し現在働いている聴覚障害をもつ女性(18名)に対して行われた。今回の調査協力者18名は、26歳から50歳までの高等教育を終えた有職者であった。彼女らは、経済的自立や自己実現を求めて就職したわけであるが、就職後に数多くのバリアを経験している。また、ライフステージの変化(具体的には、結婚・出産・育児・離婚)によってやむなく、離職・転職を経験している人もいた。障害女性の場合、条件が整備されていない状況で働き続ける要因のひとつにパートナーや家族の理解を得られるかどうかが大きなポイントとなっている人もいた。現在の厳しい就職状況において、例え、障害をもち、なおかつ女性でありながら就職できたとしても、個々人の事例からは、すさまじい努力を積み重ねている様子が読み取れた。このことは、聴覚障害女性が働き続けられるかどうかの条件の大きな理由として、個人の努力や能力に大きく委ねられている側面があることを示している。今後は、「就労」の本来の意味を女性聴覚障害者の視点からとらえ直し、課題を発信していくことが重要である。そのためには障害をもつ女性がどのような課題を抱えているかをより一層、ジェンダー視点から明確にしていく必要がある。 なお、これらの研究成果は、日本社会福祉学会第61回秋季大会(北星学園大学)において報告した。報告タイトルは、「女性聴覚障害者の職業選択と就労に関する研究」(報告者:吉田仁美、2013年9月)である。また、インタビュー調査を報告書としてまとめた。報告書タイトルは、「女性聴覚障害者の職業選択と就労に関する研究 調査報告書」(発行者:吉田仁美、2014年3月発行)である。
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