本研究は①精神障がい者本人と生活を共にする上での悩みや苦労等、家族の主観的体験を明らかにすること、②これらを踏まえて家族自身が求める家族支援について検討することを目的としている。2015 年度も上記の目的に即して、統合失調症の子どもをもつ母親を対象にインタビュー調査を実施した。 母親の語りは、本人と生活を共にする上での「ケアの実態」を中心に、インフォーマルなサポート源である「本人や家族成員等の家族に関する語り」、フォーマルなサポート源である「主治医や専門職等に関する語り」、さらに全員が精神障がい者家族会に所属しているため、「家族会に関する語り」が共通して見られた。これらのソーシャルサポートが母親自身に与える影響に着目して分析を行った。 これまで本人のケアに対する家族の負担が明らかにされ、ケアの社会化が説かれてきたが、母親の「生活の困難」は本人への直接的なケアだけでなく、「家族関係」が強く影響していることが推察された。家族の分かちがたい関係は一つの単位でもあり、本人と家族を個別に捉える視点だけでは効果的な家族支援につながらない可能性がある。 家族による支援から社会的支援に移行していくためには、本人のための社会資源や制度が整備されるだけでなく、家族が社会的支援に委ねることができるような「諸条件」も併せて整備される必要がある。こうした家族支援を具現化するものとして、現在、公益社団法人全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)が取り組んでいる「メリデン版訪問家族支援」の有効性が示唆された。
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