最終年度は、分析と成果報告を中心に行なった。なお、調査自体は最終年度も継続し、関西郊外のグループホームと、視覚障がい者対象の歩行訓練場面での参与観察及び当該場面における諸実践のビデオ撮影を行い、データを蓄積した。 分析で焦点化したのは、「相互行為中の知覚能力」である。相互行為のなかで、「何が出来るか」「何がわかるか」といったことが推し量られる場面はグループホームでも歩行訓練場面でも見られた。その際、「できる」あるいは「できない」ということの他者理解が加齢や障がいと結び付けられることにより、それに即したかたちでやり取りが組織されていくことが見出された。ただ、「ケアをする」ことに指向したワーク(グループホーム)と、「自律する」ことに指向した歩行訓練では、相互行為の組織のされ方の展開に大きな違いがあった。前者は、「能力を推し量ること」は、高齢者の次の行為を予期し、フォローアップするためのリソースとして参照される。一方後者は、「推し量られた能力」に準じた適切な行為の選択可能性を示唆するということである。 こうした違いは、「ケアすること」とはなにかという問いに対する示唆を与えるものである。以上に関する知見について、最終年度は日本保健医療社会学会等での複数回の学会発表や論文投稿を行なった。
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