研究課題/領域番号 |
24730485
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
谷口 由希子 名古屋市立大学, 人間文化研究科, 准教授 (80449470)
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キーワード | 児童養護施設 / 子ども時代の貧困 / 社会的包摂 |
研究概要 |
【研究1:進路選択・自立生活に関する先行研究のレビュー】は、主に児童養護施設からの自立に関する調査や政府発表資料、児童養護施設の援助実践、学校卒業における進学および就職と移行過程に関する文献研究を中心に行った。とりわけ今年度は、児童養護施設の援助実践について、歴史的経緯とともに分析を行った。また、施設で生活する子どもの進学率について、都道府県ごとの要因分析を行った。 【研究2:当事者の自立生活への移行過程を追跡する2年6カ月の縦断調査とその結果の分析】は次の3つに分類し実施した。(1)当事者への繰り返しのインタビュー、(2)ケース記録による施設職員の援助実践、(3)退所後の社会的援助状況の調査である。本年度はとりわけ(3)を中心に行った。具体的に、平成24年度にアンケート調査によって把握された「子ども時代に親と離れて暮らした経験のあるホームレス生活経験者」39名のなかから追跡した。そのうち、インタビュー調査が可能だった11名について自宅または支援機関に訪問・聞き取り調査を行い、生活経歴の分析した。 【研究3:施設退所後の社会的援助体制を調査および分析】。ここでいう社会的援助とは、施設、地方自治体、児童相談所、自立援助ホームNPOなど児童養護施設を退所した当事者に対する社会的援助機関である。ただ平成25年度は、上記(3)聞き取り調査に大幅に時間を費やしたこと、さらに援助機関の広がりから特定のNPO法人の調査にとどまり、地方自治体調査を実施することができなかった。平成26年度はこの点を補完し、行政機関による支援状況を調査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本調査研究は昨年度からの継続調査である。昨年度同様に調査対象施設および調査対象者の協力もあり、おおむね当初の予定通り調査は実行できている。 【1】先行研究のレビューを引き続き実施した。先行調査および先行研究の分析から、各自治体ごとの施策と施設で暮らす子どもの進学率を分析したものはほとんどないこと、また先駆的な事業を実施している東京都などの進学率が高いこと、職員の情報量が子どもの進学率に直接的に影響するなど外部要因が明らかになった。 【2】児童養護施設における子どもの進学意識の縦断調査を引き続き実施した。平成25年度はとりわけ、施設退所者へのインタビュー調査を実施し、施設退所後にどのような生活経歴をたどり、貧困状態へと陥るのか、支援のあり方について聞き取り調査を行った。 【3】施設退所後の社会的援助体制を調査に本格的に着手した。とりわけ、施設退所後の子どもを支援しているNPOの調査からアウトリーチの必要性と有効性が検討され、行政と連動した形での支援について平成26年度に検討することが課題として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は研究の最終年度である。これまで【研究1:進路選択・自立生活に関する先行研究のレビュー】、【研究2:当事者の自立生活への移行過程を追跡する2年6カ月の縦断調査とその結果の分析】、【研究3:施設退所後の社会的援助体制を調査および分析】の3分野から調査・分析してきた研究を統合し、本研究をまとめる。研究成果の発表については、これまでも研究会などで適宜行ってきたが、平成26年度はこれらの成果を統合し、所属学会で報告するとともに論文として発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定通り、使用していく。 施設備品費では、児童養護施設および子どもの進路選択に関する図書および統計資料を入手する予定である。その他、今年度は研究最終年度であるため報告書や各種印刷物を作成・配布するための予算を計上しているので予定通りに執行する。さらに、調査を行うための旅費、および関連学会に出席するための旅費を執行する予定である。
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