本研究は、児童養護施設で生活する子どもの進路選択と退所後の生活形成を縦断調査することによって、施設から自立生活への移行過程および退所後の社会的援助体系を検討することを目的として実施したものである。具体的には、子どもの主体的な進路選択への意思決定要因の形成過程と職員の援助実践の分析、施設退所後の施設による継続的な自立支援や地方自治体、児童相談所、自立援助を行う社会的機関(自立援助ホームやNPOなど)による援助状況の調査を含めて、当事者の自立生活の形成要因を明らかにすることを目的とした。さらに、施設の援助実践と連動した形で地方自治体や社会的機関による児童養護施設を退所した当事者に対する社会的援助体系を検討した。 調査は、以下の4つの項目に分けて実施した。 1:施設を退所した当事者の追跡調査、2:施設生活を経験する当事者固有の生活課題、3:主体的な進路選択と自立生活への移行過程、4:退所後の自立援助の課題。 本研究の意義は次の点にあると考える。第一に、児童養護施設から自立生活の移行過程を調査することによって得られた結果である。本研究は、子ども時代に社会福祉の介入がある児童養護施設入所児童の生活と自立の形成要因を連続的に分析していることから、将来の社会的排除のリスク予防を検討するという意味においても現在の社会福制度を検討するという意味においても実践的かつ政策的な研究である。第二に、体系的な自立援助実践および政策を考察したことである。本研究における自立援助の考察は、児童養護施設だけではなく社会的な援助機関と連動しており、今後は研究成果を政府機関やNGOにはたらきかけると同時に政策提言という形で還元していく。
|