研究課題/領域番号 |
24730486
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
伊藤 美智予 日本福祉大学, 健康社会研究センター, 研究員 (10594046)
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キーワード | 介護サービス事業所 / ライフコース研究 / ケアの質向上 / 事業所支援プログラム |
研究概要 |
本研究の目的は、ケアの質改善を志向する事業所の支援モデルを構築するため、「事業所版ライフコース研究」を行い、事業所におけるケアの質マネジメントシステムの形成プロセスを明らかにすることである。 平成25年度は4年構想の2年目であり、①分析枠組みの検討、②フィールドの組織化、③聞き取り調査の実施を当該年度における課題とした。特に平成25年度は、調査の本格的実施に着手する年度として位置づけ、②③を積極的に進めた。その結果、A市内における特別養護老人ホーム5か所(設立年数約10年の施設を選定)の協力が得られた。そのうち2施設を対象とし、1施設あたり約6回程度の聞き取り調査(2時間/回)を実施し、データ収集を完了した。残りの3施設についても、データ収集中である。平成25年度の主な成果には次の3点がある。 第一に、「事業所版ライフコース研究」の分析枠組みを完成した点である。事業所の成長やライフコースには、「社会」「法人」「事業所」「職員」の4者からの影響があると考えられた。よって、これら4者との相互作用の視点から分析することが求められる。 第二に、収集したデータの予備的分析を通して、事業所のケアの質に影響を与える事象として約20カテゴリが抽出された。具体的には、「介護事故」「家族からの苦情」「保険者からの指導」などネガティブな事象だけでなく、「内発的な取り組み」などポジティブな事象も含まれていた。 第三に、事業所版ライフコース研究の調査方法が確立できた点である。1施設あたり5-6回程度は聞き取り調査が必要になること、第1回目は導入として①設立の経緯、②法人との関係、③事業所の成長をどのように捉えているかの3点を聞くことが望ましいことなどが明らかになった。また事業所のライフコースを振り返るためのシートも開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度の実施状況報告書にて、申請時に記載した「事業所版ライフコース研究」の質的なアプローチのタイムスケジュールを若干修正し、平成25-26年度前半までに質的調査を終える予定とした。平成25年度は、フィールドの組織化に成功し、着実に聞き取り調査を実施できたと考えている。しかしながら、1施設あたり5-6回程度の聞き取りが必要になることから、週に1回協力が得られたとしても、およそ2か月程度の時間を要することがわかった。そのため、タイムスケジュールを再度修正し、平成26年中に質的調査を終了できればと考えている。聞き取り調査に時間を要するものの、調査自体は順調で、フィールドの協力を得られる見込みがあることから、最終的な調査対象数は申請時の予定通り10施設を目指す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、本研究の中心的課題である「事業所版ライフコース研究」の質的調査を、引き続き精力的に推進したい。 平成25年度よりデータ収集に着手している3施設に加え、平成26年度には新たに3-4施設の協力を得て、調査を進める予定である。これまで協力いただいた5施設は、A市内の設立年数10年の施設である。今後は対象基準を変更し、多施設を展開している法人などに着目し、事業所版ライフコース研究における多様なデータを収集し、分析していきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の中心的課題である「事業所版ライフコース研究」の質的調査は、申請時のタイムスケジュールでは平成24-25年度実施予定となっていたが、平成25-26年度に変更したため次年度使用額が発生している。 また、これまで協力いただいた施設は、比較的近距離の施設であるため、当初の想定より旅費を低くおさえることができた。 今年度も引き続き「事業所版ライフコース研究」の本格的な聞き取り調査を実施することで、調査協力者への謝金や旅費、外部委託費(テープ起こしに係る費用)などの予算を計上する。情報収集や研究成果の発表などのため、学会や研究会への参加に係る旅費も計上する。
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