研究課題/領域番号 |
24730486
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
伊藤 美智予 日本福祉大学, 健康社会研究センター, 研究員 (10594046)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 介護サービス事業所 / ライフコース研究 / ケアの質向上 / 事業所支援プログラム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ケアの質改善を志向する事業所の支援モデルを構築するため,「事業所版ライフコース研究」を行い,事業所におけるケアの質マネジメントシステムの形成プロセスを明らかにすることである。 これまでの研究により,①分析枠組みの提示,②収集したデータの予備的分析,③「事業所版ライフコース研究」の調査方法の確立,④事業所がライフコースを振り返るためのシート開発などの点で一定の成果を挙げることができた.平成26年度は,これらの成果に基づき,本研究の中心的課題である「事業所版ライフコース研究」を積極的に推進することを課題とした.平成26年度の主な成果には次の2点がある. 第一に,A市内における特別養護老人ホーム(設立年数10年程度)の協力が得られ,データ収集が進んだ点である.施設長を対象として,5回(2時間/回)のヒアリング調査を実施した.これにより,計3施設のライフコースに関するデータの収集が完了した. 第二に,これまでの経験をふまえ,今後の研究構想を強化した点である.後述するように,平成27年度以降の研究計画には,これまでにはなかった新たな視点(「事業所版ライフコース研究」のグループホームへの応用可能性の検討,事業所レベルだけでなく職員個人レベルの成長への着目)を取り入れる予定である.これにより,研究全体の強化を図る.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初,事業所版ライフコース研究のヒアリング調査に5施設から承諾を得ていたが,そのうち2施設については,対象者の異動等の理由でヒアリング調査の継続が困難になった.1施設あたり5-6回程度の聞き取りが必要になることから,週に1回協力が得られたとしても,およそ2か月程度の時間を要することになる.早急に,新たな調査フィールドを開拓する必要があると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度には,以下の4点を中心に取り組む. 第一に,本研究の中心的課題である「事業所版ライフコース研究」の質的調査を引き続き推進する.すでにデータ入手を完了した3施設に加え,平成27年度には2-3施設の協力を得て調査を進めていく.いずれの施設もA市内で設立10年程度の特別養護老人ホームとする予定である.これらのデータを分析し,特別養護老人ホームが何を契機にして成長していくのかを解明する.これらの結果は今年度中に研究成果としてまとめる予定である. 第二に,「事業所版ライフコース研究」のグループホームへの応用可能性について検討する.新オレンジプランで指摘されているように,認知症者への支援が社会的にも大きな課題となる中,認知症ケアの切り札として近年急増しているグループホームは,ケアモデルや職員配置,事業規模等において特別養護老人ホームのそれとは大きく異なる.グループホーム固有の質マネジメントシステムの形成プロセスがあると考えられることから,平成28年度の本格調査実施に向けた予備的調査を行う. 第三に,新たな試みとして,事業所レベルだけでなく個人レベル(職員)の成長にも着目する.これまでの「事業所版ライフコース研究」の質的調査において,すべての対象者が事業所(特別養護老人ホーム)の質向上には介護職員の質向上が不可欠と強調していたためである.そこで介護職員が成長する契機のひとつと考えられる研修プログラムを取り上げ,その効果検証を行うことで介護職員の質向上のための方策について検討する.具体的には,認知症介護研究・研修大府センターで実施される研修を対象とする.これらの結果も今年度中に研究成果としてまとめる予定である. 第四に,事業所支援モデルを検討するために,内発的質改善プログラムの事例収集の準備を進める.平成28年度に本格的に実施できるよう情報収集を進め,フィールドの確保に向けた取り組みを行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度途中で産休,育休を取得したため(平成26年11月11日~平成27年3月31日). また,これまで協力いただいた施設は,比較的近距離の施設であるため,当初の想定より旅費を低くおさえることができた.
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次年度使用額の使用計画 |
今年度も引き続き「事業所版ライフコース研究」の本格的な聞き取り調査を実施することで,調査協力者への謝金や旅費,外部委託費または人件費(テープ起こしに係る費用)として使用する.情報収集や研究成果の発表などのため,学会や研究会への参加に係る旅費,論文投稿に係る費用として使用する.
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