平成28年度は,新たな調査方法を取り入れるなど「事業所版ライフコース研究」の全体的な補強を行った.主に次の3つがある. 第一に,特別養護老人ホーム(以下,特養)のケアの質に影響を与えるイベントに着目し,深く掘り下げるアプローチを行った.本研究では,とりわけ施設ケアの質を著しく低下させる外的要因のひとつである「災害」に着目し,現地ヒアリング調査を通った.特養が災害時にどのような課題に直面するかなどについて経時的に明らかにした.第二に,研究フィールドを拡大し,1)設立度間もない特養,2)グループホームも新たに調査対象とした.設立して約1年半の特養を対象としたヒアリング調査から,設立直後のケアの質に影響を与えるイベントに関するデータを収集することができた.グループホームを対象としたヒアリング調査からは,特養とは運営方法や規模が異なるグループホームにおけるケアの質の形成プロセスとその特性について把握することができた.第三に,すでに収集したデータの二次分析により,特養における認知症ケアの質の評価に関する研究を推進した. 研究成果の公表については,職員個人レベルの成長に着目した論文を投稿し採択された(印刷中).また,第54回日本医療・病院管理学会などで研究成果について報告した.
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