本研究は、高齢者のライフヒストリーをインタビュー調査によって聞き取り、ライフコース的視点から高齢期の健康の維持生成プロセスを明らかにしようとするものである。 本研究の特色は、10万人規模の量的データ(JAGESデータ:日本老年学的評価研究)の二次分析によって得られた知見について、本研究費を用いて実施した質的データから検討する「混合研究法」を用いた分析を行うところにある。質的データについては20名の高齢者を対象とするインタビュー調査を行った。 健康寿命の延伸や高齢者の健康維持生成に関する研究には医学生理学的なアプローチによるものが多いが、本プロジェクトでは高齢期の健康をライフコースの中に位置づけ、社会的なアプローチから社会参加と高齢期の健康の関連を明らかにしようとする。そのため、「高齢期の健康の維持生成の一員としての社会参加」について、高齢期の社会参加に至る経路を様々な視点から明らかにするという分析目標をたて、具体的な検証仮説5点(女性の就労経験が高齢期の社会参加に及ぼす影響、地域における居住年数と高齢期の社会参加の関連、高齢期の新たな交友関係と社会参加の関連、壮年期の仕事が高齢期の社会参加に及ぼす影響、15歳時の社会経済的状況が高齢期の社会参加に及ぼす影響)を設定して、論文化に向けた分析・論点整理や学会発表を行ってきた。 平成30年度は育児休業明けでの研究再開となり、混合研究法に関する書籍の読み込みや質的データ分析用ソフトウェア(MAXQDA)を利用した分析を行った。しかし家庭の事情や体調不良により十分な研究時間を確保することができず、論文発表や学会発表等の具体的な成果物を出すことができなかった。
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