研究課題/領域番号 |
24730488
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
倉持 香苗 日本福祉大学, 福祉経営学部, 助教 (40469044)
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キーワード | コミュニティカフェ / 居場所 / 福祉コミュニティ / 地域福祉 / 活動の拠点 / スタッフのアプローチ / コミュニティ・ソーシャルワーク / ソーシャルワーク |
研究概要 |
平成25年度は前年度に引き続き、事例研究を中心に分析をおこなった。具体的には、全国コミュニティカフェの実態調査の分析結果をもとに、コミュニティカフェのスタッフおよび利用客(者)に対するインタビュー調査を実施し、量的調査では把握しきれなかったスタッフのアプローチ内容を明らかにしようと試みた。 その結果、スタッフが利用客(者)一人ひとりに対してあるいは地域に対してどのようなアプローチをおこなっているのかが明らかになった。例えば、個人の特技を把握することにより、共通の特技を持つ者同士が知り合う機会を作る、あるいはコミュニティカフェで特技を発揮する機会を作ることにより、利用客(者)自身の存在価値が認められ、やがてその場が居場所になる、というプロセスを意識したアプローチが行われていた。 また、ネットワークの創出過程については、スタッフのみならず、スタッフのアプローチを受ける側である利用客(者)に対してもインタビュー調査を実施し、スタッフのアプローチの有用性を検討した。このようにスタッフと利用客(者)の双方向からスタッフのアプローチを検討することにより、スタッフのアプローチが利用者同士のネットワーク構築の創出につながることを明らかにすることができた。 本研究の意義は、地域の活動拠点あるいは居場所づくりの必要性が指摘されている現在、スタッフのアプローチが利用客(者)同士のネットワーク創出につながる旨を明らかにした点にある。 こうした研究成果は地域福祉学会および社会福祉学会で報告したほか、社会福祉学会の若手ワークショップ(「質的調査と量的調査を組み合わせた研究ワークショップ-トライアンギュレーション手法について-」)において、量的調査と質的調査を組み合わせた研究の例として報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、平成25年度は利用客(者)自身に対するインタビュー調査を実施し、スタッフのアプローチが利用客(者)同士のネットワーク創出のきっかけになっていることを明らかにすることができた。 また、調査受け入れ先の理解と協力を得ることがでたため、利用客(者)同士のグループインタビューを実施することができた。これにより、多様な人々が集える場所の必要性とスタッフのアプローチの有用性を確認することが可能となった。個人に対するインタビューのみならずグループインタビューを実施することで、スタッフのアプローチについて多角的な視点で検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、滞りなく研究に取り組むことができており、平成26年度も研究計画書に沿って事例研究を進める予定である。 具体的には、昨年度に引き続き参与観察を実施し、量的調査(数値)では明らかにできなかった、現場実践に基づいた分析をおこなう予定である。とりわけ地域とコミュニティカフェのネットワーク構築について焦点を当て、コミュニティカフェが地域住民(あるいは地域組織)とどのようなネットワークを構築しているのか、どのような課題に取り組んでいるのかについて明らかにする。 記録分析については、日常的に記録(日誌)をつけているコミュニティカフェは少ない一方で、ホームページやブログなどでコミュニティカフェの日常を発信する、あるいはイベントの報告をしている場所は多数ある。そのため、これらのメディアで発信される情報(記録)を分析しながら、スタッフのアプローチについて理解を深める予定である。記録の活用は、量的調査では明らかにしきれなかった点および事例調査研究では把握しきれなかった点について補うことが可能になる。ブログなどのメディアを通じて、スタッフの実践内容あるいは利用客(者)の声が発信されている。こうした情報を活用することは、これまでおこなってきたスタッフおよび利用客(者)に対するインタビュー内容について、語りに含まれなかったその場の様子を理解することに役立つと考えている。そのため、こうした情報を積極的に活用しながら研究に取り組む予定である。 平成26年度は、これまでに実施した調査研究の成果を公表する予定である。現時点では、第28回地域福祉学会および第62回社会福祉学会において発表を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画通りに予算を執行した結果、小額の繰り越しが発生したが、次年度の研究に含めて執行する予定である。 次年度は、今年度に引き続き事例研究を実施し学会報告などで成果を公表する予定である。そのために以下の通り研究費を使用する予定である。 1:参与観察(交通費、宿泊費、インタビュー謝礼、テープ起こし、通信費、専門的知識提供、会議費)。2:資料収集(コミュニティカフェおよび地域づくり、居場所など関連する資料収集)。3:成果発表(交通費、宿泊費、学会参加費など)。4:その他、プリンタインクなど印刷に関わる費用やボイスレコーダーの電池や文具などの消耗品。
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