研究課題/領域番号 |
24730493
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 大阪人間科学大学 |
研究代表者 |
吉池 毅志 大阪人間科学大学, 人間科学部, 准教授 (60351706)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 精神医療 / 人権保障 / 市民運動 |
研究概要 |
初めての研究助成採択を受け、研究初年度は長期的な研究の基盤を固めるべく、6月~10月頃までは社会運動や人権保障に関する基礎文献及び市民団体や精神科医療団体の資料収集と分析に注力した。同時期に、大阪における市民活動発足過程の分析に関する学会発表の準備を行った。加えて、東京における市民活動のインタビュー調査に向けて、9月と3月にプレインタビューを実施した。学会における研究発表のほか、さらなる情報収集に向けて招待講演を通して情報提供し、その際出会う人々からの更なる情報収集を継続した。研究で明確になった事柄の概要は、下記の通りである。 1、「保安処分」「精神科病院事件」に対し、精神科医を中心とした医療従事者グループと、当事者及び当事者家族を含む市民らにより、全国的な告発・糾弾運動の展開がなされた。しかし、精神障害者による事件発生と報道により「保安処分」の動きは加速し、精神科病院における不祥事事件が次々と発生する中で、市民運動は閉塞状況に直面していた。 2、精神医療問題を危惧する弁護士が精神医療人権部会を設置し、精神科医・弁護士らが全国一斉人権救済申し立てを呼びかけたことが、精神科病院問題に各地の弁護士が関与する契機となった。大阪では弁護士と精神科医による「保安処分」学習会が連携の礎となった。 3、宇都宮病院事件は、従来の精神科病院事件の数々の問題点を表出させた。問題の社会化は、市民運動の転機となった。社会的関心と人権問題の重大性は、各集団間の合意形成を促進し、国際機関への働きかけと共に、地域における民間人権救済機関の設立を推進した。 4、大阪と同時期に発足した東京における活動は、主たる活動に携わる人員が乏しく、団体の解散に直面している危機的な状況にあった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(理由) 認定NPO大阪精神医療人権センターへの調査については、市民活動の発足過程について、史実分析を中心に研究を進め、社会的文脈に即し、大阪という一地域に限定した関連要因分析を行い、学会発表を行った。また、市民活動の活動初期及び展開期について、人々の状況認識及び選択行動、活動の社会的影響等の分析を進め、学会発表できる程度整理を終えた。 上記大阪の調査については、最終的な分析を終えてはいないが、これまで3年間の調査内容及び筆者の約10年間の市民活動経験を踏まえ、精神保健福祉士を対象とした活動紹介、日本生命倫理学会における市民活動についての招待講演、認定NPO大阪精神医療人権センターにおける市民を対象とした講座において、報告、講演を行った。 東京精神医療人権センターへの調査については、事務局長へのプレインタビューを実施した。また、同センター事務局長からの紹介により、同センターと関連の深い研究会へのプレインタビューも実施できた。インタビュー対象者と調査者の日程調整が困難なため、当初計画よりも半年遅れ、プレインタビューと本インタビュー承諾までに留まった。一方で、新たに新潟の市民活動についてインタビュー調査の承諾を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
(今後の研究の推進方策) 認定NPO大阪精神医療人権センターへの調査については、活動の中心人物に対するライフヒストリー・インタビューを実施し、より市民活動の動機形成や状況認識と選択行動を明らかにすべく調査し、分析を試みる。 東京精神医療人権センターへの調査については、本インタビューを複数回実施する。そのために必要な文献資料を収集し、文献調査を進める。 京都、兵庫、神奈川、新潟における市民活動について調査すべく、プレインタビューを実施する。そのために必要な文献資料を収集し、文献調査を進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1、インタビュー調査として、大阪・東京でのライフヒストリー・インタビュー、東京精神医療人権センターインタビュー、京都精神医療人権センターインタビュー、兵庫精神医療人権センターインタビュー、神奈川精神医療人権センターインタビュー、新潟ぬくもりの会インタビューについて、旅費・謝礼に使用する。これに、研究費の約70%を使用する予定としている。 2、インタビューデータ作成について、人権費・物品費に使用する。これに、研究費の約20%を使用する予定としている。 3、文献資料収集について、物品費に使用する。これに、研究費の約10%を使用する予定としている。
|