本研究は、高齢者のメンタルヘルス改善に資する社会的活動に焦点を当てて、国内におけるいくつかの山間・里山地域にて調査を行い、またそれらのデータの分析を通じて地域貢献に資するエビデンスを得ることを目的とした。最終年度にあたる本年度は、これまでの調査データの精緻化を目的とした関係者へのヒアリングおよびさらなる多面的な解析手法を用いた分析を試みた。具体的には、調査データの中から、地域活動へ積極的に参加している者とあまり積極的でない者を比較した結果、日常的な社会活動に参加しているものほどメンタルヘルスが良好であることが、いくつかのデータで確認することが出来た。特に、兵庫県丹波市のように、被災地域においても社会的活動の重要性が確認出来たことは、様々な災害への対策が叫ばれる現在の社会状況の中で、非常に重要なエビデンスとなったと考えられる。 具体的には、高齢者のメンタルヘルスに係る症状としてもっとも一般的な抑うつ、孤独感、社会的活動に焦点を当てて分析を行った。その結果、これまで抑うつと関わりが深いと思われていた孤独感は、社会的活動、抑うつ双方と有意な相関が認められたが、重回帰分析において他変数を統制した結果、孤独感から抑うつへの影響は認められなかった。反対に、社会的活動は他変数を統制した上でも、抑うつへ強い影響を与えていた。この結果は、高齢者のメンタルヘルスを維持するためには、社会的活動が非常に重要であり、たとえ被災地においてでも、社会的活動を継続するための環境整備が必要であることを示していると考えられる。
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